Follow Us

学長メッセージ

新たな100年に向けて
~ジェンダー平等の推進に貢献する女性人材の養成~

学長

竹安 栄子 (たけやす ひでこ)

専門分野は家族社会学、地域社会学、民俗学。
2000年に本学現代社会部の教授となり、同学部長などを経て、17年に特命副学長、20年5月15日より現職。

京都女子大学は、2020年創基100年を迎え今年から新たな100年に向けての歩みを始めました。
本学の礎である京都女子高等専門学校は、甲斐和里子、大谷籌子、九條武子、さらに仏教婦人会員たちの女子高等教育への熱意と信念を原動力に設立されました。女子大学設立を志した大谷籌子の遺志を受け継ぎ、九條武子が1912年に「女子大学設立趣意書」を公表し、西本願寺が大学設立を文部省に申請しました。
しかし認可には至らず、代わって設立されたのが京都女子高等専門学校です。
1898年制定の明治民法で女性が法的権利から排除された時代でしたが、学問への情熱に突き動かされた女性たちの力で女子高等教育機関の実現にこぎつけました。

戦後、文学部と家政学部からなる女子大学としてスタートしましたが、その後の社会の変化に伴い、日本社会を支える女性人材養成を目指して現代社会学部、発達教育学部、そして女子大学としては唯一の法学部を設置する女子総合大学に発展しました。
今なおジェンダー格差の大きい日本にあって、男性からの視線に煩わされることなく、のびのびと自分らしく振舞える女子大学の教育環境は、女性の人格形成に大きな意義を有しています。

このような女子大学の人材養成における社会的役割を明確化し、新たな100年に向けた目標として第2次グランド・ビジョンを策定しました。
その第1項目は、ジェンダー平等の実現に貢献する人材の養成、第2は、SDGs達成に貢献する大学、第3は多様性の実現と女性の生涯にわたる学びの支援、第4は世界の大学との連携、第5は新たな価値の創造です。
特に第1のジェンダー平等の実現に貢献する人材養成は、日本社会にとって最重要課題の1つであると考えています。男性と女性の格差の大きさを示す指標であるジェンダーギャップ指数(GGI)では、世界156か国中、120位と先進諸国はもとよりアジアでも最低のレベルです(世界経済フォーラム、2021年)。
経済領域と政治領域での男女の格差の大きさがこの原因となっています。

男女の格差の解消は、個人の生活レベルの問題であるだけではなく、社会の変革と経済の発展に大きく貢献する、というのはもはや世界の共通認識です。
さまざまな分野に女性が男性と同じように参画していること、とりわけ意思決定領域に女性が等しく参画していることが、組織や社会の発展に寄与するということはすでに世界の国々で実証された事実です。
この事実を踏まえて、本学では学生に、女性だからという理由で人生に枠をはめることなく、未来に向けて夢を大きく描いてほしい、とのメッセージを送っています。
ジェンダー平等の実現は、女性だけでなくすべての人にとって幸せな社会を創ります。
そのような日本社会を構築する女性人材の育成が重要であると考えています。

そのためには、理論的に考える力、自分の考えをきちんと発言する力、そして責任をもって行動できる力が求められます。
専門分野に加えて、幅広い教養、いわゆるリベラルアーツを学ぶことが重要です。
また、クラブや社会連携活動などの多様な活動を通してさまざまな経験を積み重ねること、地域で市民と協働する活動や異なる分野の学生との交流は、自らの視野を広げ、自信を深めてくれます。
本学では、学生の主体的な活動を支援する体制を整え、さまざまなチャレンジを応援しています。

本学は、明治末期、頑強な男尊女卑の風潮の中にあっても、女性の高等教育機関創立に情熱を傾けた
女性の熱意によって設立されました。本学は3人の志を次世代に受け継ぎ、変革を担うチャレンジ精神と世界の変化を見通すことのできるグローバルな視野を備えた女性を育てていきたいと考えています。
長い歴史の中で培われた伝統を大切にしながらも、新しい時代の創造に向かって次の100年への歩みを
進めてまいります。