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現代社会学科

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【現代社会学部】ソウル出張1(嘉本伊都子教授)

 
ソウル家庭法院60周年記念国際カンファレンス

韓国のソウル家庭法院(日本の家庭裁判所にあたります)の調査官宋賢鍾さんのお招きで、家庭法院60周年記念の国際カンファレンスに2023年11月15日に参加してきました。

家庭法院60周年記念の国際カンファレンスで登壇する二宮周平立命館大学名誉教授

テーマは日本で言う面会交流(韓国では面会交渉)でした。アメリカからはニューオリンズで初めてアジア系で裁判官になった方(写真のブルーのジャケットを着ている方です)です。インド出身で結婚を機にアメリカに移民し、現在は判事だそうで、すごいですね。ドイツからは女性の判事が(韓国はドイツへ看護師を派遣していた歴史があり、関係は深いと思われます)、シンガポールからは男性の判事が、しかし、日本からの判事の参加はどなたもありませんでした。日本では、裁判官が民間人と会う機会はほとんどありません。判事(裁判官を10年以上経験がある人だとおおよそ思ってください)のかわりに二宮周平立命館大学名誉教授、犬伏由子義塾大学名誉教授、鶴岡健二先生家庭情報問題センター専務理事が登壇されました。

嘉本は、二宮先生の科研費でコロナの直前2019年11月に台湾にも同様に裁判所等を、宋 調査官と調査をしました。台湾で宋さんに次は韓国も調査へ行きたいですとお願いし、実現しました。

日本と韓国の離婚への道

日本では紙切れ一枚離婚届に、親権は父?母?質問にチェックをし(これに☑️がないと受理されません)、養育費、面会交流について話し合いましたか?について、話し合っていなくても、受理されます。協議してなくても協議離婚として扱われます。

一方、韓国では、同じ協議離婚でもちゃんと協議をしないと離婚ができません。まず、記入する紙は1枚ではありません。義務相談員が離婚したい夫婦を離婚室で記入内容をチェックします。熟慮期間が3か月あり、すぐには離婚が成立しません。ただし、DVで接近禁止命令がある場合などは短縮されます。欧米でも裁判所で離婚が成立することが一般的で、裁判所からドキュメントが渡されます。日本の協議離婚には裁判所に行く必要ないのでありません。国際結婚の場合後にトラブルになるので、裁判離婚をして、証明書をもらっておいたほうがいい場合もあります。

未成年の子がいる離婚の場合は、熟慮期間が3か月あります。ただし、DVで接近禁止命令がある場合などは短縮されます。離婚後の計画書をもとに、家庭法院の判事が、夫婦同席の部屋で面談をします。父母の意思の確認から、子の監護者は誰か、面会交流(別居親が、子とどのように会うか、頻度など)、養育費にいたるまで確認するそうです。

いつ判事はお休みになるのですか?と思わず質問してしまいました。人口が集中しているソウルでは、家事事件は多いと想像でき、日本の家庭裁判所がやっていないこの業務も、やらなければならないのは、相当負担だと思ったからです。当番制になっており、当直をしなければならない日などを利用して、週2回ぐらい担当するそうです。

国際カンファレンスの翌日はソウル家庭法院で、崔皓植法院長、曹永昊首席部長判事、李光偶部長判事、金享律部長判事、金奉男判事(男に奉ずるというお名前でびっくりしましたが、英語も堪能で頭脳明晰だということがすぐわかる、笑顔の素敵な女性です。お一人だけ女性で、他は男性でしたが、トップが52歳ですので日本に比べると若い集団であることがわかります)、そして調査官のお二人が、訪問団(総勢15名)の質問にお答え下さいました。
日本では、台湾の裁判官の訪問に塩対応だったと聞いて悲しくなりました。韓国、台湾のほうが、離婚に関する福祉的な役割も裁判所が担っている点は、日本よりはるかに優れた制度(法改正がとても早いこともあります)で、変化を恐れないで社会課題の解決に情熱を注いでおられます。3カ国とも少子化に対応した動きでもあるのですが、、、、。
日本と韓国と台湾の合計特殊出生率(total fertility rate=TFR)を比較してみてください。

志あるところに道はできる。日本の志が問われています。


日本から大学教員、弁護士の方々が参加。私の隣は韓国の若い女性弁護士でした。