

教育学科
【発達教育学部】被災地に人形劇を届ける「いい顔・笑顔 人形劇の会(神戸)」のお話を聞く
「児童文化活動論」では、子どもに文化を届ける活動について実際に地域で児童文化活動に取り組んでいらっしゃる方に講演をお願いしています。今回、2024年12月26日に、被災地の子どもに人形劇で笑顔を取り戻してほしいとの思いで活動を続けている「いい顔・笑顔 人形劇の会(神戸)」の事務局:吉田節子さんにお話を伺いました。
「いい顔・笑顔 人形劇の会(神戸)」は、1995年の阪神・淡路大震災の後に立ち上げられたボランティア団体で、今年で30年となります。吉田さんは、当時、ご自身も被災され不便な生活を余儀なくされているなか、「神戸おやこ劇場」の母親を中心とした仲間とともに会を立ち上げ、全国のプロ・アマチュアの人形劇団と被災地をつなぎ上演会を実現させるコーディネートを行いました。インフラが徐々に回復しても、今までの日常生活、そして、知り合いを失くして傷ついた子どもたちからは笑顔が消えていました。そんな子どもたちが、人形劇を観たことで笑顔を取り戻したのです。人形劇を観ているその一瞬でも子どもたちが笑ってくれたことが、子どもたちの周りの大人にも笑顔を取り戻させました。上演後には、「地震の後、久しぶりに笑った」という声がたくさん聞かれたそうです。そして、人形劇の上演とあわせ人形作りも合わせて行うと、子どもたちは作った人形を手にそれまで閉ざしていた気持ちを解放するように演じて遊び出し、とても盛り上がりました。吉田さんはそんな姿を見て、人形が持つ不思議な力、芸術文化の価値をあらためて感じたそうです。
「いい顔・笑顔 人形劇の会(神戸)」は、その後も、中越地震、東日本大震災、能登半島沖地震などの被災地に、何年にもわたり継続的に活動を行っています。
いち主婦であった吉田さんはじめ地域の母親たちが、被災直後から、自分の子どものことだけではなく地域の子どものために何かできないか、どうしたら笑顔になってもらえるかを考え、人形劇という芸術文化によって神戸の復興に取り組んだお話をお聞きし胸がいっぱいになる思いでした。そして、その活動は、日本各地に広がり、30年も継続して取り組まれているのです。吉田さんは、「仲間がいたからできた」とおっしゃっていましたが、仕事でもなく、だれかにやれと言われたからでもなく、子どものためにこれほど一生懸命になれるということに、学生たちも感動してお話に聞き入っていました。
社会全体が大きく変化し地域での人間関係も希薄化していますが、そんな社会だからこそ、子どもたちを見つめ、子どもを守り育てる大人たちの存在が今求められていると思います。
講演をお聞きし、いち学生・いち教員として、また、いち地域人として、たいしたことではなくても、子どもが何かを必要とするときに手を差し伸べかかわれる存在になりたいと、学生とそんな話しをして考え合いました。
(*写真:神戸の震災の様子や会の活動の様子を撮影した写真とあわせて講演をおききしました。また、人形作りも教えていただきました。)
(「児童文化活動論」担当教員:松崎行代)