ソウル家庭法院&広域面接交渉センター訪問2025年3月10日(嘉本伊都子)
2023年にソウル家庭法院60周年記念のカンファレンスに参加させてもらいましたが、韓国の変革のスピードは1年ごとに進化していくので驚かされることが多いです。今回もソウル家庭法院の首席調査官となられました宋賢鍾先生のお招きにより、子奪取案件(ハーグ条約)も扱う今里・松野弁護士、静岡の丹羽弁護士、東京家庭裁判所(東京家裁)で長年調停委員をされている犬伏先生、心理学者の小田切先生と訪問させていただきました。学部長職ゆえ、たった1日の弾丸訪問になりましたが、最強の弁護士軍団と先生方の間に入れてもらい、移動時間も食事時間、カフェタイムすら毎回勉強になります。

ソウル家庭法で李元炯法院長はじめ、3人の判事が事前に用意した日本側の質問に丁寧にお答えいただきました。宋賢鍾首席裁判官が日本語に通訳してくださいました。ありがとうございました。桜の横断幕に一同感動。丹羽弁護士がお持ち帰りになりました。
離婚する夫婦は、韓国の場合、熟慮期間という期間が設けられ、面会交渉(日本では面会交流と言いますが、離婚後も子どもが親に会う権利を保障するために、普段同居していない親に会うことを言います)や養育費など取り決めがきちんとできていないと離婚させてもらえないのです。紙切れ一枚の「協議離婚」で離婚ができる国は世界でも珍しいのです。海外で暮らす時に、日本の常識は世界の非常識と思っておいた方が、「こんなこと知らなかった。こんなことが犯罪なんて」ということになります。片方の配偶者に黙って子ども日本へ連れ帰ると子の奪取、つまり誘拐になるのです。国際的に子が連れ去られた場合のルールを決めているのがいわゆるハーグ条約、子奪取条約です。日本は2014年にこの条約に締結し、法も施行されました。あれから10年、昨年の国会で共同親権法案が通りました。
日本でも2026年に共同親権を選択できる法律が施行される予定です。ところが、日本の家庭裁判所には、継続的に面接交流をする場所はありません。DVやモラハラなどが原因で離婚した夫婦ですら、子の面会交流を裁判で争った場合、面会交流を民間の機関でするように、という判決がでるのです。このような高葛藤ケースは、家庭問題情報センター(通称FPIC)という元調査官、元裁判官が運営する公益社団法人には受け入れてもらえません。民間の団体のフォーラムに参加した時、なんと民間団体に丸投げする裁判官がいる(レアケースだと思いたいのですが)ことを知って驚きました。トラウマを抱える配偶者は子を元配偶者にあわせたくないのは、当然でしょう。民間団体が面会交流を支援しても、その団体の職員やボランティアがカスタマー・ハラスメントを受けたり、トラウマになるような経験をすることがコロナ禍になる前に報告されました。
法務省のホームページには令和3(2021)年12月付法務省民事局の発信で、「親子交流支援団体の活動が制度的に位置付けられておらず、親子交友支援団体の個々の努力によって支援の在り方が模索されている現状に鑑み、親子交流支援団体等が支援を提供するにあたり、一つの参考となるような基本的な事項を列挙したものです」という「親子交流支援(面会交流支援)に関する参考指針について」が出されています。4年前から「制度的に位置づける」努力のあとが見えないままの法制化となるようです。法務省のH Pを参考に離婚する人がいるでしょうか?共同親権の理解も周知されているとは思えません。
一方、韓国は公的な機関が、そのようなケースにも対応できる場所としてあります。ソウル家庭法院には、面会交渉の場が2023年に訪問したときにはすでにありました。韓国では日本のような民間団体がないからこそ、公的機関が実施するのだそうですが、どの地域でも利用できる、それが今回訪れた広域面接交渉センターで2024年4月から実質稼働しているということです。官用車で1時間かかる九里市まで連れていってもらいました。

写真1は、九里市にある登記所の跡地にできた広域面接交渉センターの小学校低学年向け面会交渉ルームです。右側のマジックミラーで子どもに危険が及ぶ行為がないか、観察できるようになっています。また遊び方がわからないお父さんに遊び方の実践を誘導することもあるそうです。
ソウル家庭法院には外でのびのびと遊べる安全な場所があるのですが、広域面接交渉センターにはないため、室内に広々としたスペースが確保されていました(写真2)。また、中学生などにはカラオケルーム(写真3)で、一緒に歌を歌えるスペースなどがあって、なかなか難しい年頃の子どもとも楽しく歌ったり、ニンテンドーのゲームもあって、ここに来たいと子どもが思える工夫も随所にみられました。



日本で2026年の法律制定に携わる方々、そして全国の家庭裁判所のみなさんに韓国のソウル家庭法院を実際に見ていただきたいと、来るたびに願わずにはいられません。
以上

ソウル家庭法で李元炯法院長はじめ、3人の判事が事前に用意した日本側の質問に丁寧にお答えいただきました。宋賢鍾首席裁判官が日本語に通訳してくださいました。ありがとうございました。桜の横断幕に一同感動。丹羽弁護士がお持ち帰りになりました。
離婚する夫婦は、韓国の場合、熟慮期間という期間が設けられ、面会交渉(日本では面会交流と言いますが、離婚後も子どもが親に会う権利を保障するために、普段同居していない親に会うことを言います)や養育費など取り決めがきちんとできていないと離婚させてもらえないのです。紙切れ一枚の「協議離婚」で離婚ができる国は世界でも珍しいのです。海外で暮らす時に、日本の常識は世界の非常識と思っておいた方が、「こんなこと知らなかった。こんなことが犯罪なんて」ということになります。片方の配偶者に黙って子ども日本へ連れ帰ると子の奪取、つまり誘拐になるのです。国際的に子が連れ去られた場合のルールを決めているのがいわゆるハーグ条約、子奪取条約です。日本は2014年にこの条約に締結し、法も施行されました。あれから10年、昨年の国会で共同親権法案が通りました。
日本でも2026年に共同親権を選択できる法律が施行される予定です。ところが、日本の家庭裁判所には、継続的に面接交流をする場所はありません。DVやモラハラなどが原因で離婚した夫婦ですら、子の面会交流を裁判で争った場合、面会交流を民間の機関でするように、という判決がでるのです。このような高葛藤ケースは、家庭問題情報センター(通称FPIC)という元調査官、元裁判官が運営する公益社団法人には受け入れてもらえません。民間の団体のフォーラムに参加した時、なんと民間団体に丸投げする裁判官がいる(レアケースだと思いたいのですが)ことを知って驚きました。トラウマを抱える配偶者は子を元配偶者にあわせたくないのは、当然でしょう。民間団体が面会交流を支援しても、その団体の職員やボランティアがカスタマー・ハラスメントを受けたり、トラウマになるような経験をすることがコロナ禍になる前に報告されました。
法務省のホームページには令和3(2021)年12月付法務省民事局の発信で、「親子交流支援団体の活動が制度的に位置付けられておらず、親子交友支援団体の個々の努力によって支援の在り方が模索されている現状に鑑み、親子交流支援団体等が支援を提供するにあたり、一つの参考となるような基本的な事項を列挙したものです」という「親子交流支援(面会交流支援)に関する参考指針について」が出されています。4年前から「制度的に位置づける」努力のあとが見えないままの法制化となるようです。法務省のH Pを参考に離婚する人がいるでしょうか?共同親権の理解も周知されているとは思えません。
一方、韓国は公的な機関が、そのようなケースにも対応できる場所としてあります。ソウル家庭法院には、面会交渉の場が2023年に訪問したときにはすでにありました。韓国では日本のような民間団体がないからこそ、公的機関が実施するのだそうですが、どの地域でも利用できる、それが今回訪れた広域面接交渉センターで2024年4月から実質稼働しているということです。官用車で1時間かかる九里市まで連れていってもらいました。

写真1 広域面接交渉センター
写真1は、九里市にある登記所の跡地にできた広域面接交渉センターの小学校低学年向け面会交渉ルームです。右側のマジックミラーで子どもに危険が及ぶ行為がないか、観察できるようになっています。また遊び方がわからないお父さんに遊び方の実践を誘導することもあるそうです。
ソウル家庭法院には外でのびのびと遊べる安全な場所があるのですが、広域面接交渉センターにはないため、室内に広々としたスペースが確保されていました(写真2)。また、中学生などにはカラオケルーム(写真3)で、一緒に歌を歌えるスペースなどがあって、なかなか難しい年頃の子どもとも楽しく歌ったり、ニンテンドーのゲームもあって、ここに来たいと子どもが思える工夫も随所にみられました。

写真2広域面接交渉センター

写真3 広域面接交渉センター

写真4 広域面会交流センターにて参加者と
日本で2026年の法律制定に携わる方々、そして全国の家庭裁判所のみなさんに韓国のソウル家庭法院を実際に見ていただきたいと、来るたびに願わずにはいられません。
以上