伊藤睦先生

PROFILE

法学部 法学科
伊藤睦先生
Mutsumi Ito

研究テーマ:憲法的刑事手続、証拠法、証人審問権、伝聞法則、証拠法

博士(法学/東北大学)。三重大学人文学部准教授、教授を経て、2018年度より現職。著書に『判例学習・刑事訴訟法〔第3版〕』(共著、法律文化社、2021年)、『司法面接「的」手法の問題点 刑事司法と社会的援助の交錯』(共著、土井政和先生・福島至先生古稀祝賀論文集、2022年)などがある。

模擬裁判の実演を通して
法的思考力と表現力をはぐくむ。

刑事訴訟法を中心に刑事・少年司法全体の問題を取り上げるゼミとは別に、刑事訴訟法の発展科目である模擬裁判の授業も行っています。自らの主張を組み立てる法的思考力と表現力を実践的に養うため法の知識を総動員し、学生自身が裁判の全シナリオを考案・実演します。受講生全員で分担して一つのものをつくり上げる過程で、積み重ねた努力が結実する大きな達成感を得られるはずです。法学部生らしく刑事司法の現状とそれを取り巻く社会に対する問題意識をもち、目に見える形や数字で表しづらい法学部の学びの成果を自信に変えてほしいと思います。

グループワークをしながら模擬裁判を行い、映像を学内に公開。

通常のゼミでは、えん罪事件の調査をしています。弁護人と意見交換をしたり、事件に関係する現場を確認したりすることもあります。裁判傍聴や施設参観なども実施しています。刑事法を正しく理解するためには、何よりも、刑事司法の現状とそれを取り巻く社会に対する問題意識をもつことが重要です。それは判例や学説の理屈だけを見ていてもなかなか身につくものではないので、できるだけ具体的な事例に触れること、現場の声を聴くこと、実践的に学ぶことを重視しています。
模擬裁判の授業はゼミではなく、講義科目の一つです。受講生も伊藤ゼミのゼミ生限定ではありません(実際、別のゼミの人の方が多数です)。ただし、司会進行も含めてすべてを受講生が主導し、グループワークを中心に行うため、進め方や内容は実質的にゼミのようなものになっています。この模擬裁判の授業では、受講生が架空の事件のあらましと争点等を設定し、関係者それぞれの主張の内容を決め、シナリオと裁判・審判に必要な資料を作成します。そして最後に、それを実演し、その映像を学内に公開しています。

法的に意見表明する力を養うために。

法学部では、法的な知識を用いて、法的に意見表明をする力を養うことがもっとも重要です。模擬裁判の授業では、法と裁判に関する知識を総動員して、事件に関する情報を収集・分析し、それを用いて自分なりの主張を組み立て、法的に正しい手段で表現することを実践的に学びます。ただ裁判を作るだけでもその力は身につくのですが、あえて他学部の人も含めた大勢に視聴してもらうことを前提として作ることで、見て面白く、有罪か無罪かを視聴者が悩むようなギリギリのラインのもので、争点を盛り込みつつも1回の裁判で決着がつくように、かつ、実際の裁判以上に法的に正しく、といった条件が課されることになるので、法的思考力・判断力・コミュニケーション力などを高めることにつながります。
とはいえ、私のゼミや授業では「楽しく学ぶ」ことも大切にしています。リラックスしたムードの中で自由な発想で意見を出し合うことの方が、実力を養うためには重要だと考え、できるだけ学生たちが意見を言いやすい環境を作るよう心がけています。

コツコツと努力すれば、成し遂げられることを体験できる。

法学部の学びは、力がついていても、それを実感することはなかなか難しいところがあります。しかし、私のゼミでは、えん罪事件について文献調査をした後で、弁護士との意見交換会や他大学との合同ゼミで勉強した内容を報告し、毎年、外部から高い評価を受けています。
また、模擬裁判の授業では、上述のとおり、最終的に作り上げたものを学内の皆さんに見ていただいています。受講生一人ひとり、もともとの実力には差があるのですが、模擬裁判は全員何らかの作業を請け負ってもらい、全員分担・分業で一つのものを作り上げます。そのため、完成したあかつきには、受講生一人ひとりが、達成感、満足感をもつことになるはずです。コツコツと努力すれば一つのことを成し遂げうるということを体験してもらいたいと思います。

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