PROFILE
家政学部 食物栄養学科
坂手誠治先生
Seiji Sakate
研究テーマ:運動・スポーツ実践による健康保持・増進
博士(学術/滋賀県立大学)。財団法人近畿健康管理センター、函館短期大学食物栄養学科講師、相模女子大学/大学院栄養科学部管理栄養学科/栄養科学研究科教授等を経て、2020年より現職。著書に『今日からはじめるメタボ&ロコモ予防ノート』(共著、大学教育出版、2021年)、『健康管理概論 社会・環境と健康 第3版』(共著、講談社、2017年)などがある。
対象者や現場の状況をつぶさに観察し
熱中症予防の本質を見つけ出す。
私のゼミでは、主に夏季のスポーツ活動時の熱中症予防について研究しています。スポーツ現場に出向き、練習や試合時の発汗量・飲水量の調査、また採取した尿から脱水状態を評価するなど、実情に即した体験的な取り組みが特徴です。調査を行うに当たって重要なのは、対象者や現場の状況に対する緻密な観察です。また、問題の本質や解決のヒントを見つけるには、対象者の話にも真摯に耳を傾けなければなりません。相手を理解しようと努める姿勢は、将来、管理栄養士としての仕事にも生かせると確信しています。
「運動・スポーツ・身体活動」をキーワードに研究に取り組む。
ゼミでは「運動・スポーツ・身体活動」をキーワードに学生の興味・関心に基づき、研究テーマを決定していきます。熱中症予防に関する研究を行う学生のだけでなく、自身がこれまで関わってきたスポーツに関する研究、高齢者の健康をテーマとした研究、スポーツ選手の食事や女性アスリート特有の問題などの研究を行う学生もいます。私自身はこれまで労働者の体力や生活習慣病予防のための安全で効果的な運動方法に関する研究、また、夏季の労働やスポーツ時の熱中症予防に関する研究を中心に行ってきました。今後も、学生自身の興味・関心に基づく研究テーマに取り組んでほしいと考えていますが、高齢者の介護予防や健康寿命の延伸に寄与する研究、若年者の運動実施率を高めるための研究、あるいは労働者の健康管理に関する研究などにもチャレンジしてくれることを期待しています。
観察や対話を大切にし、感謝の気持ちを忘れずに。
調査・研究を行うにあたり、学生には常に意識してほしいことが2点あります。1点目は、対象者の様子や現場の状況をしっかり観察すること。できれば対象者の話もしっかり聞いてほしいと思います。そこに問題の本質や解決のためのヒントが隠れている場合があるからです。2点目は、対象者の方々への感謝の気持ちです。対象者の方々は、“わざわざ”時間を作って調査に協力してくれているのです。この対象者への感謝の気持ちは、研究を行う上でのベースとなるものだと思っています。熱中症予防に関しては、調査結果に基づき選手やチームへの熱中症予防教育を実施し、その有効性や効果の検証なども行っています。これらは、当然研究として行っているのですが、対象者の方々への感謝の気持ちの表れであり、社会とつながる方法でもあります。多くの学生は大学卒業後、管理栄養士・栄養士として就職します。専門の栄養面はもちろんとして、運動の話もできる管理栄養士、栄養士になってほしいと思っています。また、運動指導においても栄養指導においても、相手のことを精一杯理解しようとする姿勢が大切です。そのためには、学生時代から自分の幅を広げるために、調査以外でもさまざまな人と出会い、話し、いろんな経験をしてほしいと思っています。
学びの環境を作り、勉強する仲間の一人として高め合いたい。
卒業研究を進めていくなかでは、大変なことも多く、また根気も必要です。しかし、一つのことにじっくり取り組むことができる時間は人生においてとても貴重です。学生には、ぜひ、このようなゼミの時間を通じて、「何を学び」、「どのように成長したいのか」、「今後、それをどう活用していきたいか」といったことまでじっくりと考えてほしいと思っています。また、ゼミは教員と学生がともに研究する場であるとともに、互いに高め合う場です。私の仕事は、そのような場を作ること、そして常に進化させていくことだと思っています。お互い、一生、勉強です。