PROFILE
発達教育学部 教育学科
齊藤和貴先生
Kazutaka Saitoh
研究テーマ:生活科の授業づくり、評価
修士(教育学/東京学芸大学)。東京都の公立小学校・国立大学附属小学校で28年間の教員経験を経て、2021年度より現職。専門は生活科教育学、総合的な学習、特別活動、授業研究。近著に『絵本で広がる小学校の授業づくり-豊かな心と思考力を育む-』(小学館、2022年)、『学びをみとる-エスノメソドロジー・会話分析による授業の分析』(共著、新曜社、2023年)、『実践・小学校生活科指導法』(共著、学文社、2024 年)がある。
授業観察から授業観・教育観を磨く。
先人の授業実践記録や文献を読むことも大切ですが、授業や学校現場について学び始めた学生にとって、実際の授業を参観することや教育実習を体験することは、自分自身の授業観・教育観を磨く上でとても重要なことだと考えています。子どもの「学びの論理」や、授業実践に込めた教師の思いや願いに触れることが、学生の見方や考え方を鍛えてくれます。授業は二度と再現されない一回性の営みです。そのような授業から多くを学び、仲間との対話を通じて理想の学びを実現できる教師になってほしいと願っています。
生活科や総合的な学習を中心に、理論を学び、体験を積む。
私自身は生活科や総合的な学習の授業づくりに関心をもっています。特に、実際の授業実践の発話分析や子どもの作品分析をすることで、子どもが何をどのように学んでいるのか、どのような力が育っているのかを考えています。近年は食育やキャリア教育、教科横断的な指導、保幼小連携教育、子どものメタ認知といった視点から授業分析をしています。ですから、ゼミではこのような研究成果を学生に提供できるように努めています。
ゼミの内容は大きく二つに分けることができます。一つ目は、生活科や総合的な学習についての文献を読んだり、具体的な映像資料や子どもの作品例をもとに議論したりしています。教師として子どもの言葉をどのように理解し、学びを見取るかということに焦点を当てています。二つ目は、学級経営上のさまざまな問題について、これまでの学生自身の学校経験を踏まえながら議論しています。「いじめ」や「不登校」をテーマにしたときには、言葉に詰まったり慎重に選んだりしながら議論がすすみます。
さらに、国公立小学校の研究授業や研究発表会に参加して、具体的な授業観察から教師の指導法や子どもの「学びの論理」を考える機会も大切にしています。子どもの姿に驚き、子どもから学び、子どもの魅力や可能性を信じて引き出すことのできる教師、教科の本質を理解して教材研究や単元開発のできる教師、そして、子どもとともに学び続け成長していこうとする教師を育てていきたいと思っています。
ゼミ生が話し合って決めるフィールドワークで実践的な力を養成する。
3回生では、教材研究や単元開発の実践的な力量をつけることを目的にしたゼミ合宿を行っています。合宿のねらいやテーマ、目的地の決定は、すべてゼミ生の事前調査や話し合いで決定しています。このことは、将来教師になったときの授業実践に直結します。ゼミ合宿のしおりづくりやICTを使った映像づくりも、教師としての実践的な指導力につながります。
2023年度は石巻・仙台・松島の地を2泊3日で巡ってきました。東日本大震災の被害を実感的に理解し、その後の復興の様子を調査し、防災教育としての内容や方法を追究することがテーマでした。歴史的な見方や広い視野で、物事を多面的・多角的に捉え、客観的な理解と人々の営みや思いに寄り添った教材研究ができる力を養っていきます。
仲間との対話を大切にしながら、卒業研究に取り組む。
4回生では、保幼小連携教育(生活科)、シティズンシップ教育(総合的な学習)、ESD教育(総合的な学習)、いじめ問題、絵本を活用した道徳教育など、各自の問題意識や興味のあるテーマと格闘しています。
グループワークや国公立小学校の授業観察の経験も、学生の問題意識を醸成する機会になっています。卒業研究を通して学生が養ってほしいことは、学校現場で生かすことのできる実践と理論をつなげる思考力と実践力、そして幅広い教養です。大学での学びを学校現場へとつなぐことのできる教師になってほしいです。