藤本猛先生

PROFILE

文学部 史学科
藤本猛先生
Takeshi Fujimoto

研究テーマ:中国近世の政治・制度史

博士(文学/京都大学)。専門は中国近世史。日本学術振興会特別研究員(PD)、清泉女子大学専任講師を経て、2020年度より現職。論文「直睿思殿と承受官—北宋末の宦官官職」(『東洋史研究』74—2、2015)で第26回蘆北賞(論文部門)を受賞。著書に『風流天子と「君主独裁制」—北宋徽宗朝政治史の研究』。

他者の意見や考えに触れながら
自身の価値観を研ぎ澄ませていく。

中国や朝鮮半島などの歴史(近代以前)から学生本人が興味あるテーマを選び、関連する先行研究や史料を元に掘り下げます。個々人が調べた内容はゼミ生全員で討論し、あらゆる可能性を模索しながらさらに考察を深めていきます。ゼミ活動において私が重視しているのは、他者の考えや意見を参考にしながらも、自分自身の力で研究を進める姿勢です。先人の研究や過去の資料を鵜吞みにせず、当時の歴史的状況を自分なりに吟味し、史実を追究してほしいと思っています。研究によって研ぎ澄まされていく思考や価値観は、その先の人生で必ず役に立つはずです。

史料や先行研究をもとに、自分自身で考察することがポイント。

ゼミでは中国・朝鮮半島など、東アジアの歴史について研究しています。その内容はさまざまで、例えば秦の始皇帝が実施した儀礼や後漢時代の宦官の活動、天体観測技術、古代朝鮮の「花郎(ファラン)」の研究などもあり、学生自身が興味のあるテーマを選択。テーマについて自分なりの考察をすることがポイントです。史料や先行研究のいうことを鵜呑みにせず、当時の状況などから、本当はどうだったかを考えていくことが重要です。 私自身は1000年くらい前の中国・北宋時代の政治史を研究しています。当時の政治状況がどうだったのか。なぜ当時の為政者はそのような政治判断をしたのか。その結果、歴史がどう動いたのか。一見単純に見えた歴史的事件が、実はいろいろな紆余曲折、さまざまな人々の思惑がからまって発生していたということを明らかにし、これまでの説をくつがえすことができたときは、このうえない面白さを感じます。

ゼミはみんなで協力しながら、それぞれの研究を深化させていく場。

ゼミでは自分の力で研究を進めてもらうことを大切にしています。そのため、担当の学生がテーマに関する先行研究や史料を調べて発表し、その内容について全員で討論します。もちろん全員がそのテーマに詳しいというわけではありませんが、必ず全員に意見を出してもらいます。そうすることで、そのテーマを解明するいろいろな可能性が出てくるわけです。単純な歴史用語に関する質問であったとしても、時にはそれを手がかりに、それまで考えていなかった新たな可能性が提示されることもあります。それを聞いて、発表した学生自身がさらに再考察をする。ゼミは、教員の考えを押しつける場ではなく、みんなで協力しながら、それぞれの研究を深化させていく場になっています。

歴史学を通して自らの価値観を磨き、他人に寛容になってほしい。

まずは歴史を考えることの楽しさを知ってほしいですが、単に歴史的な知識を増やすだけではなく、さまざまな考え方に触れた上で、自分の考えや価値観を磨いていくやり方を学んでほしいと思っています。大学で学ぶ歴史学には答えがありません。歴史上の出来事について、なぜそうなったのか。そのことが次にどのような影響をもたらしたのか、ということを考える学問です。歴史学は未来を予知することはできませんが、このようなことが起これば、次にどうなるのか、複数の可能性を考えることができます。多くの情報の真贋を見極め、起こりうる将来像を思い描く。そうすることによって次に起こる事態に対して身構えておく。このようなことは通時代的に人類にとって必要な能力だと思います。歴史を考えることによって、実は現代を生き抜く力を培っているのだと考えています。さらに、他人に共感する力も身につけてほしいと思っています。過去の人々も一瞬先がわからない中で必死に生きてきた人々です。なぜその人がそのような行動をとったのか、当時の状況を踏まえて分析することが大切です。過去の人々に寄り添うことができれば、多様化する現代社会の中でも他者にやさしく接することができると思います。

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