PROFILE
文学部 国文学科
川島朋子先生
Tomoko Kawashima
研究テーマ:中世文学(狂言の作品研究)
博士(文学/京都大学)。2009年度より京都女子大学短期大学部准教授、2012年度より現職。能楽学会、中世文学会に所属。著書に『カラー百科 写真と古図で見る 狂言七十番』(共著、勉誠出版、2014年)などがある。大蔵流狂言師・茂山千三郎師に師事し、狂言の稽古を受けている。
現代人の思い込みを捨てて、
中世人の感覚で狂言作品を読み解く。
3回生の前期で狂言の台本から曲を一つ選んで研究を行い、後期はさらに深く学びたいテーマを掘り下げて発表します。狂言は演劇であり室町時代の口語という比較的わかりやすい言葉が使われているがゆえに、思い込みや現代人の感覚で解釈を誤ってしまう恐れがあります。根底には時代を超えた普遍的な要素があるものの、当時の社会背景や常識は現代と異なる点も多く、学生にはその時代を生きた人の感覚で読み解くよう助言しています。国文学特殊講義3では狂言の実演も交えた授業を行っているので、あわせて受講してより狂言への理解を深めようとする学生もいます。この研究・発表を通して、自ら確認し考える意義を理解し、物事を見極める能力を身につけてほしいと思います。
狂言をはじめとした中世文学を通して読解力、研究力を育む。
3回生のゼミでは狂言の台本を一つ取り上げ、それぞれ選んだ曲を解読します。言葉の解釈に気をつけながら台本全体を読み解くことに加え、芸能・演劇として舞台で演じられる狂言が「どのように演じられているのか」、「どんな装束や面を着けているのか」、「どのような所作を伴っているのか」といった演出面も考えながら読み進めていきます。
4回生では卒業論文のテーマを各自で設定し、卒論作成に向けて段階を踏んで研究を行っていきます。3回生時に扱った狂言に関わる研究を卒論テーマとして継続する学生が目立ちますが、中世文学から能、説経、物語、説話、和歌など幅広い分野から自分の興味・関心に沿ったものをテーマに選ぶ学生もいます。
主観を育てつつ、客観性をもって、相手のことを考えて伝える。
狂言の場合、先にも述べたように、喜劇であり、言葉も比較的わかりやすいゆえに、現代人としての主観で解釈してしまうことがあります。客観的に、中世の社会背景や人々の常識を踏まえた上で、できるだけ中世の人と同じ感覚で読もうとすることが必要であると伝えています。
また、ゼミでは自分が深く研究を行うだけでなく、その内容を発表することも大きな課題です。自分で調べたことをいかにうまくまとめて、人にわかるように説明するか、というのは非常に難しいことですが、卒業論文を執筆する上でも、また社会に出てからも必要とされることです。自分の主観ではなく、客観的に物事を見つめ、相手のことを考えて伝えることを大切にしています。さらに、何かを調べる際に、何でも鵜呑みにするのではなく、必ず自分で確認し、本当に正しいかどうかを考えることも大切であると指導しています。
自分の考えをわかりやすく伝えると同時に、情報を選別・精査するスキルも。
発表や卒業論文の作成を通じて、自分の調べたことや考えたことを、他人に対していかにわかりやすく伝えるか、ということを学んでほしいと思っています。それは相手のことを考えることでもあり、卒業後社会に出た後も、大切なこと。ぜひ身につけてもらいたい能力の一つです。また情報が溢れる社会であるからこそ、何が正しいのかを見極める能力も養う必要があります。研究を通じて、情報を自分で確認し、考えることを学んで、将来に生かしていってほしいと願っています。