PROFILE

現代社会学部 現代社会学科
中田兼介先生
Kensuke Nakata

研究テーマ:生き物の生態調査

京都大学理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。長崎総合科学大学人間環境学部講師、東京経済大学現代法学部助教授・准教授を経て現職。日本動物行動学会発行の国際学術誌『Journal of Ethology』編集長。著書に『クモのイト』、『びっくり! おどろき! 動物まるごと大図鑑』、『まちぶせるクモ 網上の10秒間の攻防』などがある。

身近な生き物に関する
素朴な疑問解明に取り組む。

ゼミの大きな特徴は、生物の生態を対象とし、野外でのフィールドワークが必要になる点です。数名のグループで生物の生態について疑問を立て、仮説や実験・観察方法を自分たちで考え、実際に調査活動を行って、その結果に基づき、疑問について一定の答えを出すという一連の流れを体験しながら進めていきます。これは卒業論文をまとめる際に必要となるプロセスでもあります。学生は「クモの造網場所の特徴は何か?」、「LEDライトに昆虫が誘引されないのはなぜ?」など、動物の自然な行動や植物の変化を楽しみながら観察し、身近な生き物の素朴な疑問の解明に取り組んでいます。

クモやアリ、昆虫といった生物を野外観察。

私は陸上の無脊椎動物の行動を主な対象に、どのような適応的意義があるのか、どのような生態的影響があるのかを研究しています。近年は、クモが網を張る時の行動や意思決定のあり方およびその進化と多様性の解明に取り組んでいます。過去にはアリの社会構造とその動態についても研究していましたし、共同研究で草花と送粉昆虫との相互作用の研究や里山に生息するカメの個体数推定に参加したこともあります。研究手法としては、野外観察と野外・室内での実験、数理モデルにシミュレーションを用いた理論的解析を組み合わせて進めています。学生は、「クモの造網場所の特徴は何か?」、「働かないアリがいるのはなぜか?」、「ダンゴムシは嗅覚と視覚のどちらを利用してエサを探すか?」、「LEDライトに昆虫が誘引されないのはなぜか?」というように、身近な生き物や植物に関する素朴な疑問を解明しようと、研究に取り組んでいます。

自然を対象とすることもあり、スケジュールも柔軟に。

ゼミでは、生物の生態、進化、多様性などに関わる問題を扱います。教科書を読んだり、野外での生物の観察を行なったりすることで、関心のあるテーマや解くべき問題を各自が設定していきます。似通った関心をもつ人がグループとなり、テーマを洗練させつつ、問題に一定の答えが導き出せるようさらに観察や実験に取り組みます。虫や草花など身近な動植物であれば観察しやすいですが、本人の意欲次第でどのようなものでも扱うことはできると思いますし、実際にイヌや外来植物を対象とした学生もいました。また、ゼミのスケジュールについても柔軟に対応しています。例えば、蚊を観察対象とする場合は夏季に限られるため、4回生前期には観察・実験のための準備と、テーマに関連する先行研究の調査を行ない、夏休み期間中に観察・実験をし、後期に一気に卒業論文をまとめるなど、学生の学びを促す意味もあり、学生の活動の進展に応じつつ、卒業論文を提出できるよう指導しています。

環境意識の向上にも役立つ。

身近な生き物の観察を通じて、自然の成り立ちなどに対する理解を深め、環境意識の向上に役立つのではないかと期待しています。また、疑問を立て、その疑問に答えを出すための方法を考え実際に行動に移す、という能力は、学生が社会に出たときに必要不可欠なもの。3回生前期から4回生後期まで、ロングスパンで授業を行っているため、半期という短期間で必ずしも学生の進歩・成長が見えてくるわけではありません。しかし、2年間をかけて学ぶうちに、考える力や行動力に加え、論文を読む力、調査する力、分析する力、仲間とともにプロジェクトを行う力など、さまざまな力が身についていくことでしょう。

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