PROFILE

家政学部 生活造形学科
渡邊敬子先生
Keiko Watanabe

研究テーマ:アパレル人間工学・被服体型学・被服構成学

静岡大学大学院教育学研究科家政教育専攻修了。修士(教育学)。大妻女子大学大学院家政学研究科博士後期課単位取得退学。博士(学術)。2003年から京都女子大学短期大学部講師、2010年から現職。著書・共著に『日本人成人の人体寸法データブック2014-2016』、『被服学事典』、『消費者の視点からの衣生活概論』などがある。

3Dテクノロジーと身体データを使って、
科学的にアパレルや製品の設計を行うゼミ。

ゼミでは、アパレル(衣服)や製品設計に関する課題を取り扱います。その基礎として、人体の形態(骨格・筋・脂肪)と動作を理解し、その測定方法や3Dデータの分析・統計処理、3D-CADなどを使った製品設計への応用などについて学びます。これらを基に各自が研究テーマを設定し、データや情報の収集から分析、わかりやすく説明できるスキルを身につけます。テーマは、企業からの委託でプロスポーツ選手の体を3D計測して体型に合うスーツを設計したり、バレエダンサーやフィギュアスケーターの動きにくさを改善した衣裳を制作したり、障がい者のための服を設計する、下着設計のために成長期の体形変化を分析するなどで、充実した研究設備・機器とその解析技術を活用して研究しています。

3Dスキャナーや3D動作分析装置を用いて、人体の形態や動作を捉える。

人体の形態や動作などの分析と3D-CADを使った製品設計を中心に研究しています。人体の形態や動作を捉える手法として、全身/足部の3Dスキャナーや3D動作分析装置があります。人間の体は、寸法が同じであっても同じ形ではありません。例えば、3サイズが同じであっても、厚みのある体か扁平な体かなどで、全く違った体つきになります。足も同じで、同じサイズでも、足先の形や偏平足かどうか、足首の傾きなどで、靴の合う・合わないが生じ、足の痛みなどの問題につながります。また、体の形は動作によって変化するため、これに対応できないと動きにくい服になります。このような問題を解消するためには、まず前述のような人体の形や動作を数値として捉えることが必要になります。このとき数十万点の3次元座標値で構成される人体の3Dスキャンデータや動作解析データから、どんな情報を取り出すのかがポイントになります。これには骨格・筋・脂肪など人体の構造を理解しておくことと、立体と平面の関係を認識する空間認識の能力が不可欠になります。ゼミでは基礎知識や理論の習得、実際に制作してみることを通じてこれらのことを学んでいきます。少し難しそうに思えるかもしれませんが、基本的なことを理解すれば、最新の解析ソフトを使いながら、卒業研究のための分析が十分に行えるようになります。その分析結果を理論立ててまとめ、わかりやすく説明できるよう工夫をしています。

3D技術を使ってさまざまな課題解決のため研究を進めていくゼミ生たち。

胸が大きくて服が合わない、ヒップに合わせてパンツを買うとウエストがだぶだぶ、などといった学生が普段から抱えている素朴な衣服の問題を卒業のテーマとすることもあれば、企業からの依頼で肥満や中年体型などの特異な体型の衣服設計についての分析を依頼されて取り組むこともあります。また、IT技術の発展を背景に個別生産(パーソナリゼーション)の衣服が話題になり、顧客の体の3次元計測データとアパレル3D-CADを利用して、体に合う服が自動で設計できるようになる、という夢のような課題にも取り組んできました。まだ手動の部分が残りますが、3Dスキャンデータから寸法を出し、CADに入れると自動で「体の形」に合うスーツ型紙が生成されるといったシステムを開発しています。このシステムを使って、筋肉の発達したプロラグビー選手のためのオフィシャルスーツの設計に取り組み、実際に選手が着用して好評価を得たことは、とても楽しく貴重な経験でした。他には、高齢者や障がい者の衣服が合わない、着脱がしにくいなどの問題、バレエ衣裳やフィギュアスケート衣装の着心地や運動性能の問題を解決するための研究と実際の製作なども行っています。学生たちは、それぞれ夢いっぱいのテーマに取り組んでいて、データの収集や分析、論理立てて考えていくことは少し大変ですが、結果が出てくるとワクワクして楽しげに、さらなる分析と研究を進めてくれています。

仲間と助け合うゼミでの研究経験が社会生活でも役に立つ。

計測の技術やデータの分析方法は、先輩から代々、引き継ぎを受けていて、その技術を自分の研究対象に応用し、必要な部分は新しい技術を取り入れて、それを後輩に引き継ぐようにしています。これは理系の研究室では当然のことですが、文系理系の入り混じる本学科では珍しいかもしれません。また、違うテーマの研究をする学生同士でも、できるだけお互いの研究を理解して、助け合って研究を進めてほしいと考えています。私の研究室の実験や人体計測は、一人では無理なケースも多く、どうしても仲間と助け合うことが必要になります。人に助けてもらうことが必要な場合でも、できるだけ仲間に迷惑をかけないように段取り良く計画を立て、準備を万端にしておくというような気づかいや計画性が自然と身についているように思います。このような仲間と協力して課題を達成する経験と能力が、社会人になってからも、社会生活や仕事の中で役に立っているようです。

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