PROFILE

発達教育学部 教育学科 音楽教育学専攻
大谷正和先生
Masakazu Otani

研究テーマ:近現代音楽の楽曲分析と演奏

京都市立芸術大学音楽学部卒業、同大学院修了。フランス国立リヨン高等音楽院修了。日本現代音楽ピアノコンクール優勝、青山音楽賞受賞。現代曲を含む独自のプログラムでリサイタルを行うほか、大阪フィルハーモニー交響楽団、京都市交響楽団、京都フィルハーモニー室内合奏団、広島交響楽団などのオーケストラと共演。歌曲伴奏、室内楽の分野でも幅広い活動を行っている。

近現代音楽の楽曲分析や研究を通じて、
その時代の演奏表現を追求する。

私はJ.S.バッハを中心としたバロック期の音楽と、主に20世紀以降に作曲された現代音楽について研究しています。クラシック音楽の根幹となるバッハの音楽と、新たな表現の可能性を大きく広げた現代音楽は、両極に思われますが、それぞれに知的好奇心をかき立てられる奥行きの深い音楽です。ゼミでは近現代音楽を中心に、楽曲分析や演奏表現を研究。ゼミ生の興味に応じて毎年テーマを設定し、2019年度は近代フランスを代表するC.A.ドビュッシーの《前奏曲集》を取り上げました。この作品が作られた20世紀初頭の時代背景を考察し、各曲において用いられているドビュッシー独自のピアノ書法、旋法や和声を理解し、この時代のスタイルを踏まえた演奏表現を追求しています。

学生の意見も取り入れ、それぞれにふさわしい表現を模索する。

例えば同一曲を複数の学生が同時に学習する場合があるとします。この場合、同じ曲であっても表現の方法や解釈は学生によりさまざまで、私自身、音楽の無限の可能性と創造性に驚嘆させられることもしばしばあります。学生にはどんな曲を演奏する場合でも、「どう表現したいのか?」、「この曲の中でどんなところにこだわっているのか?」、「自身の課題や問題点は?」といったことについて質問を投げかけます。私の一方的な解釈の押しつけにならないよう、常に学生の意見も聞きながら、学生一人ひとりにふさわしい表現を一緒に模索していきます。また、ゼミ生全員でお互いの演奏を聴き合い、各自の演奏の特徴や長所、改善点などについて話し合い、より説得力のある演奏につなげるための表現方法、技術の向上を図っています。

現代音楽を数百年後の名曲として残していくために。

ベートーヴェンが生きた時代には、ベートーヴェンの音楽は革新的な現代音楽でした。それが長い期間にわたり演奏され続けることによってふるい分けられ、数多の曲が不朽の傑作として今日まで残っています。一方、まさに現在、創作・演奏されている現代音楽は一般的には難解というイメージが先行しますが、時にはジャズやロック、民族音楽などからの影響などグローバル化した現代ならではのユニークさと、これまでになかったさまざまな語法を用いて表現の可能性を大きく広げた斬新さがあります。今この時代に生まれ、「音楽の在り方」について問い続ける現代音楽も、数百年後には名曲として残っているかもしれません。そのためには現代音楽も繰り返し演奏することにより、その隠された価値や意義を語り続けなければなりません。微力ながらその橋渡し役になれればとの思いから、知られざる現代の秘曲を含めてその魅力を分析・研究し、学生をはじめ、多くの人に伝えていきたいと考えています。

自分自身と向き合い、受容する心の大きさをはぐくんで。

ピアノの勉強は自己と真剣に向き合う孤独な時間です。一つの楽曲を仕上げていくには無駄なものをそぎ落とし、作品として美しいフォルムをつくり上げていかねばなりません。その間には、音楽の楽しさを実感するとともに辛いこともあるでしょう。しかし、美しい音楽を追求するためには日々の地道な練習が欠かせません。学生にはまず、粘り強く継続していく力を身につけてほしいと思っています。また、音楽の多様性を理解するために他者の表現も受容しながら自身の中でそれを咀嚼し、さらに自分なりの表現を練っていく必要があります。ゼミ生同士でお互いに切磋琢磨することから表現者としての意識を高め合い、音楽を通して自発性と協調性を養い、社会に出てからも人として一歩ずつ成長してほしいと願っています。

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