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研究所所長メッセージ

ジェンダー教育研究所 所長挨拶

「教育・研究を通じたジェンダー平等な社会の実現を目指して」

2022年10月、京都女子大学に「ジェンダー教育研究所」が開設されました。本学はグランドビジョンの第1番目に「ジェンダー平等の実現に貢献できる女性の養成」を挙げています。ジェンダー教育研究所は、これを受けて、社会の変革を担う女性人材の養成を視野に入れた研究の遂行と教育方法の開発・実施を目的として設置されました。

ジェンダーギャップ指数が示すように、日本では特に政治、経済の分野における男女格差が大きく、その重要な要因の一つが、意思決定の場に占める女性の割合が極めて小さい、ということです。政治領域については、国会議員の女性比率は衆議院で10.0%ですが、世界の平均は26.6%、日本は193カ国中164位となっています(列国議会同盟2023年2月時点のデータ)。また、経済領域では、労働者人口に占める女性の割合は45%と約半数ですが、非正規雇用者に占める女性の割合は68%となっています(総務省労働力調査2022年)。一方、上場企業における女性役員の比率は9.1%にとどまり(東洋経済新聞社2022年調査)、たとえばフランスの45.3%、ノルウェー41.5%、イギリス37.8%など(OECD Social and Welfare Statistics2021)、海外の先進国とは比較になりません。

DVや性暴力、貧困の問題など当事者の多くを女性が占める社会的課題の解決が、欧米に比べ20~30年遅れていると言われるのも、女性の意思が適切に国の政策に反映されてこなかったことに、その主たる要因を見出すことができるでしょう。また世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2022」のデータによれば、ジェンダーギャップ指数と、一人当たりGDPおよび合計特殊出生率との間に、それぞれ正の相関関係が見られることも分かっています。その背景には人々の意識や政策など多様な要因の存在が推測されていますが、女性の社会的地位の向上が多くの社会問題、経済問題の解決につながっていることは国際的にも認められているところです。

2015年の国連サミットにおいて全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、「ジェンダー平等の実現と女性・女児のエンパワーメントは、すべての目標とターゲットにおける進展において死活的に重要な貢献をするものである。人類の潜在力の開花と持続可能な開発の達成は、人類の半数に上る(女性)の権利と機会が否定されている間は達成することができない」と述べられており、SDGsの目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う」の重要性が、全ての目標に共通するものとして強調されています。

これまで社会の中で見過ごされ、後回しにされてきた女性や女の子たちのニーズに応え、彼女たちの声を聴き、その意思を反映したジェンダー平等な教育・研究を推進し展開させていくことは、女子大学だからこそ可能となるミッションです。そして、それは女性のみならず社会全体の福祉の向上、持続可能な豊かさの実現に貢献するものであり、ジェンダー教育研究所は、まさにそのミッションにおいて、内外の拠点となるべく活動をすすめてまいります。皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

2023年3月5日
手嶋昭子