PROFILE

文学部 史学科
小原嘉記先生
Yoshiki Kohara

研究テーマ:法からみた日本の中世社会

京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学、博士(文学)。専門は日本中世史。日本学術振興会特別研究員(PD)、中京大学国際教養学部准教授を経て、2019年より現職。著書に『三重県史 通史編』、『中近世武家菩提寺の研究』、『講座 畿内の古代学Ⅰ』(いずれも分担執筆)などがある。

歴史を学びながら、
現代社会に必要な
思考法を身につける。

3回生ゼミでは、前期は中世史料に慣れてもらうために、教科書を参照しながら戦国大名が出した法令の原文を読み、語句の意味を確認したり、逐語訳をしたりして、史料から歴史的情報を読み取る訓練を行います。あわせて、関連する史料や先行研究も調査してもらい、学問的な議論を行うための作法を学ぶ。後期には公家法・武家法・寺院法など多様な中世法の中から各自テーマを設定して、調査・考察を行い、その成果を発表してもらっています。歴史学を学ぶことを通じて得られる思考法は、情報過多な現代においても必要な能力です。日々、流されてくる客観性を欠いたネットニュースや悪意のこもった情報、根拠のない噂・流言であたふたしないために役立つといえるでしょう。

古代・中世の歴史を体感できる地の利を活用。

ゼミでは基本的に学生の自主性と自発的・能動的な取り組みを重視しているため、個々の進捗状況に応じてアドバイスをしたり、発表後の講評で課題・問題点を整理してさらに調べておくべきことや、深めるべき議論の方向性を示したりすることなど、必要最小限の助言を行っています。それは、「答え」や「正答」を安易に求めるのではなく、自分でじっくり調べる姿勢を身につけてもらいたいからです。また、私は「歩いて学ぶ」歴史学という趣旨のもと、現地見学会などのフィールドワークを行ったり、ゼミ外でのそうした催しへの参加を促したりもしています。特に京都・奈良・滋賀は古代・中世の歴史の舞台であり、あちらこちらに残る古代・中世の痕跡を身近に見つけることができます。こうしたことは京都の大学の利点です。地図を見ながら歩くことで距離・地形や周辺の環境などが体感でき、体を使った分だけ記憶にも長く残ります。歩く中でいろいろと思いを巡らすこともできます。

文化財や史跡保存等など社会と関わる歴史学も。

昨今では実学重視、社会に役立つ技術開発の重視という潮流の中、直接的には社会の「役に立たない」人文学などは不要とする視野の狭い考え方が堂々と主張されています。歴史学は、実学的観点や技術開発等の観点からいえば、何の役にも立ちません。それでも大河ドラマ人気など歴史ファンは多く、歴史に対する需要は確かに存在し、各自治体では文化財や史跡保存等など地域の歴史に関する仕事もあり、社会との関わりは小さくはありません。私自身、自治体史の編さん・執筆や、水利・地名・民俗の聞き取り調査などに参加した経験をもっています。

文献史学を通じて「史料批判」の思考法を養成。

文献史学は古文書や古記録を通じて過去の社会を復元していく学問ですが、諸史料の情報にはさまざまなバイアスがかかっていたり、不正確なものであったり、事実を捻じ曲げた独善的な主張をしているものであったり、そもそも文書であったりと、史料の文字面を鵜呑みにするだけでは不十分で、情報の質をしっかりと吟味して議論を組み立てないといけません。歴史学ではこれを「史料批判」と呼んでいます。さまざまなレベルの情報をしっかりと見極める「史料批判」の思考法は、情報過多な現代だからこそ役立つに違いありません。

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