PROFILE

発達教育学部 心理学科
稲塚 葉子先生
Inazuka Youko

研究テーマ:思春期から青年期の自己と適応

1995年京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻博士後期課程単位取得退学、教育学修士。専門は臨床心理学。心理カウンセラーとして、教育や医療の臨床現場で主に思春期・青年期の方やその家族の心理支援に携わる。京都女子大学では学生相談室専任カウンセラーを経て、現職。

若者の視点から考える 思春期・青年期の心理。

地域社会や家族、友人をはじめ、人と人の「つながり」が希薄になっている現代。思春期・青年期(心身共に大人へと変化していく時期)は、社会の状況を最も映し出しやすい時です。この時期に、こころの居場所となるような安定したつながりをもてないために、さまざまな心理的ストレスや“生きにくさ”を抱える人がいます。現代の若い人たちはどのような心理的特徴をもっているのでしょうか。その背景には、心理学の視点から見ると、どのような要因が考えられるのでしょうか。また、そうした特徴が社会への適応に困難をもたらしているとしたら、どのような心理的支援の可能性が考えられるのでしょうか。

子どもから大人への移行過程に寄り添う。

私は臨床の現場で、さまざまな困難を抱える若者とその家族の心理支援に携わってきました。現代では青年期の心理的課題をめぐる困難は非常に多様化しており、大人になっていくということは、ごく当たり前のことのようで一筋縄ではいかない過程といえます。
迷うことや悩むこと、葛藤すること、失敗や挫折—個人差はあるにせよ、誰しも経験してきたことでしょう。これらの体験から目を背けるのではなく、模索し、抱え、自分なりの意味を見出していくことが、大人になっていくプロセスにおいて重要です。一見ネガティブな体験の中にも、個人の成長の芽が隠れていることが多いと実感しています。

関心事をテーマに、自身の心と向き合う。

自分の興味・関心に沿って卒論のテーマを探すところからゼミはスタートします。例えば、「友人関係におけるキャラとアイデンティティの関連」「母娘の親密性と娘の自立との関連」「SNSの利用とパーソナリティ傾向、適応との関連」「ネガティブな体験の意味づけが適応につながるプロセス」など。実に多様ですが、いずれも青年期(特に女性)の心理をめぐるもので、ゼミで互いのテーマについて知ることが、良い意味での刺激となります。研究手法としては、アンケート調査で得られたデータを統計的に解析し、考察をします。自身の関心事を中心テーマに据え、時間とエネルギーをかけて卒論に取り組む─見方を変えれば、自分自身の青年期課題に向き合う作業ともいえます。卒論を通して個々の主観的体験に対する見方や考え方が相対化され、物事を客観的に捉える視点や姿勢を身につけることにつながれば、それは将来への糧となるでしょう。

大学生活の中で、生きる力を身につける。

大時時代は、新しい人と出会い、新たな経験を積み重ねるプロセスの中で、大きく変容する可能性に満ちています。決められたレールの上を決まった方法で歩くのではなく、思いきって試行錯誤をしてみてください。そして新たな課題に直面した際に、自ら考えて対処していく力を身につけてほしいと思います。社会の中で生きる上で、自己理解と他者理解は大切であり、自己理解と他者理解は、実は表裏一体で深くつながっています。ゼミでのグループ活動を通して、互いに理解し支えあう姿勢や、人としての温かさ、柔軟さを育んでほしいと願っています。こうした「関係をつむぐ力」は、将来、職業人として、家庭人として生きていく上で、重要な資質となります。柔らかなこころを大切に、どうぞしなやかに成長し続けてください。

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