PROFILE

家政学部 食物栄養学科
辻 雅弘先生
Tsuji Masahiro

研究テーマ:栄養学、胎児・新生児脳障害に対する基礎研究

1992年鳥取大学医学部医学科卒業、2000年京都大学大学院医学研究科にて学位取得。2002年から2004年まで米国Johns Hopkins大学神経科博士研究員。神戸市立医療センター中央市民病院小児科医長(小児神経担当)、国立循環器病研究センター再生医療部室長を経て2018年より現職。

 栄養学は、どこまで
社会に貢献できるのか。 

近年、栄養学は、健全な発育や健康維持に加えて、さまざまな病気や障害の軽減・予防の面でも大きな役割を果たせることが明らかになってきており、栄養学への関心が高まっています。中でも、薬物による治療が難しい妊婦や小児においては、栄養学によってもたらされる種々の改善の可能性に、大きな期待が寄せられています。特に、胎児から成人にわたる神経疾患や発達障害において、栄養学がどれだけ貢献できるのか、みなさんと一緒に基礎研究(モデル動物を用いた実験)と臨床研究(患者さんを対象とした研究)の両面から研究していきたいと考えています。また、フランス、スイスと基礎研究を共同で行っていますので、学生のうちから国際共同研究に親しんで欲しいと思っています。

栄養学の知見を活かしたい。

栄養学の研究分野には、既に多くの知見が集積しています。それらを活かせば、栄養学を疾患・障害の予防・軽減に役立てることができます。特に、小児の脳障害に対しての栄養を利用した治療法開発は、新薬の開発や幹細胞治療を行うことと比べると、早期に、かつ容易に進められるものです。
また、現在、簡単に健康増進に役立てられる食事法が明らかになってきていますが、そうした知見が社会にしっかり届いていなかったり、誤って伝わってしまっていることが少なくありません。この点において栄養学は、もっと積極的に社会と関わっていくべきだと私は考えています。

信念に基づき、真理を追究する研究。

私は、子どもの脳障害を少しでも減らし、軽くすることを目標に研究をしています。
低出生体重児は、標準体重出生児よりも発達障害となる可能性が高いことが知られています。そのようなケースについて、モデル動物を用いて新たな治療法につながる研究を行っています。また、胎児期から小児期の栄養と発達の関連を中心とした臨床研究も行います。
基礎研究では常に、臨床応用を念頭に置いています。そして臨床研究では、種々のバイアスが影響し得ることを考慮しながら、真に健康や発達に影響を与える食事・栄養を見出していきたいと考えています。

社会人としても活かせる視点を伸ばす。

ゼミでは、複数の研究テーマを同時進行させています。低出生体重児から発達障害となったモデル動物に、ある母乳中成分を生後の早期からより多く補充し、発達障害を軽減できないかを検討しているのも、その一環です。
ゼミの学生には、基礎研究にしても臨床研究にしても、一つの研究だけでは限界があることを理解した上で、できるだけ真実に近づくような方法を考えながら研究を進めるようにと指導しています。
栄養学は、すぐに社会に還元できる学問です。学生たちには、知見が得られた研究手法と信頼性レベルの違いを理解した上で(例えば、観察研究と介入研究で得られた知見の違いを理解した上で)専門家として他者に明確に栄養学の知識を伝えられるような人物になってほしいと願っています。ゼミを通じて学生たちも客観的、批判的かつ建設的に研究結果を見ることができるようになります。こうした視点は、栄養学以外の分野においても社会人として重要な資質ですから、さらに伸ばしていきたいですね。

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