PROFILE

文学部 英文学科
荘中孝之先生
Takayuki Shonaka

研究テーマ:イギリス文学・文化

バーミンガム大学大学院修士課程(M.Phil.)、大阪大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。京都外国語短期大学専任講師・准教授・教授を経て、現職。『カズオ・イシグロ—日本とイギリスの間から』『カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読む』、『カズオ・イシグロの視線—記憶・想像・郷愁』、『見て学ぶアメリカ文化とイギリス文化—映画で教養を磨く』などの著書がある。

小説や映画・音楽
を対象に感受性や
創造的な思考力をはぐくむ。

私のゼミでは、小説や詩、演劇作品といった文学を中心に、それらが映画化されたものや音楽なども対象にして、幅広くイギリス文学・文化を学びます。背景の歴史や社会との関連において、それぞれの対象作品をどのように解釈することができるのか、具体的な事例を交えながら一緒に考えていきます。例えば、女性の社会進出や人種差別などを扱った映画や小説、音楽などに触れて、関連資料を読んだあと、それらについて議論をしたり文章を書いたりします。こうしたことを通して、英語力だけでなく、感受性や想像力、美的感覚、他者に共感する能力、バランスの取れた批判的で創造的な思考力など、さまざまな力を養成し、自分の言葉で自分の意見を述べられることをめざします。

新聞記事をきっかけにしたテーマも。

私自身は2017年にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家カズオ・イシグロを、日本文学やアメリカの映画・音楽との関連において研究しています。この作家には日本とイギリス、そしてそのどちらにも当てはまらないような、多面的な魅力があります。「動く対象」ともいえる現存の作家を研究するのは難しい部分もあるのですが、同時代を生きる者として共有できる要素も多く、毎回新作が出るのを楽しみにしています。とは言え、ゼミではカズオ・イシグロだけを取り上げるのではなく、さまざまな問題について考えるために、たとえば死刑や安楽死といった社会で話題になっている事件などをきっかけとしてテーマとすることもあります。

自分の考えを言語化し、コミュニケーションに生かす。

映画や音楽なども含めて文学とは、人間のあらゆる感情や森羅万象を取り込むことのできる、非常に柔軟な表現形態です。それらを研究することは、決して現実からまったく遊離した無用の行いではありません。その過程で古い作品の意外な現代性に気づいたり、他者に共感する能力が身についたり、さまざまな知識を得たりすることができます。また一つのテーマに関してたくさんの資料を集め、さまざまな解釈の可能性を探りながら、自分の意見を組み立てていく。そして細かな部分にまで気を配り、その自分の考えを言語化して他者とコミュニケーションを図ろうとすることは、おそらくあらゆる仕事に通ずるものであり、そこで培った能力は社会に出てからもきっと役に立つと思います。

最後まで一生懸命努力することが財産に。

意見を述べる際には、その根拠を示したり、自分の考えのもとになっている情報の出典を記したりすることが大事だと考えています。また、レポートの添削をするような時には、学生の自由で柔軟な発想を尊重し、修正を促す場合にもその一部やヒントだけにとどめ、あとは自分で考えてもらうようにしています。学生にはいつもいろいろな事柄について、ただインターネットからの情報を受け売りするのではなく、自分の言葉で自分の意見を述べてほしいと願っています。卒論の指導では自分の研究テーマについて何度も発表したり、レポートを提出してもらったりしますが、コピー&ペーストに対しては厳しく注意します。それらを通じてプレゼンの能力や文章を書く力、そして粘り強い思考力が養われていくと思います。また何よりも自分に与えられた課題に真摯に向き合い、噓やごまかしをすることなく最後まで一生懸命努力することは、学生の皆さんにとって大事な経験、財産になると信じています。

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