PROFILE

文学部 国文学科
小山順子先生
Junko Koyama

研究テーマ:新古今時代の和歌

京都府立大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士前期課程・後期課程修了。博士(文学)。平安時代から室町時代に掛けての古典和歌を研究しているが、研究の中心は『新古今和歌集』およびその時代の和歌表現である。著書に『コレクション日本歌人選 藤原良経』(笠間書院)、『和歌のアルバム 藤原俊成 詠む・編む・変える』(平凡社)がある。

『新古今和歌集』を分析することで、
驚きと喜びがもたらされる。

私のゼミでは3回生で『新古今和歌集』を読んでいます。新古今時代の和歌は、それまでに詠まれた有名な和歌や、『伊勢物語』、『源氏物語』を踏まえて和歌を詠む、いわゆる本歌取りという技法が完成した時代。本歌取りとはパイ包みの料理のようなものです。適当にかじりついても味はわかりますが、適切な場所からナイフを入れた時、パイに包まれた中に意匠を凝らした料理があることがわかります。作者の意図を理解して言葉を分析することで、本当の意味を汲み取ることができます。複雑で難しいところもありますが、その分、作者がこめた意味を理解できた時、「なるほど!」という驚きと喜びがあります。

小さな気づきがさまざまな発見に結びつく。

3回生ゼミでは、発表者が担当する和歌について、言葉の意味や修辞技法、作者が参考にしたと推測される和歌・漢詩・物語を検討した上で、注釈書に書かれた解説や現代語訳が適切かどうかを判断してもらいます。さらに、前後に並べられた和歌と合わせて読んで、どのような意図でその場所に置かれているか、その和歌の役割を検討します。注釈書に書かれた内容を盲信するのではなく、自分の調べてきた内容と照らし合わせ、自分の頭で考えて検討して結論を出すことが重要です。その後、担当学生の発表を踏まえ、私から問題点や疑問を提示し、それについてゼミの学生全員で意見を出し合います。どんな小さなことでも、間違いや誤解を恐れず、思いついたことはどんどん発言してもらいます。もちろん論理的な説明や根拠も必要なのですが、そうした小さな気づきが、結果としてさまざまな発見に結びついてゆきます。

本歌取りと二次創作の共通性を探る。

現代は二次創作が盛んです。人気のある一つの作品が、別の作者によって新しい作品に作りかえられてゆく。パロディやパスティーシュといった方法もあります。過去の作品を踏まえたり引用することによって新たな作品を生み出すという方法は、本歌取りと共通しています。たとえば、アンサーソングという方法があります。既存のポップソングが男性の立場で歌われる内容だとして、その歌を相手の女性の立場からの歌詞に作り変えるというものです。これは本歌取りでもよく用いられる方法です。また、お笑い番組でよく見る謎掛けや大喜利の、あるものを意外なものと組み合わせてその共通点で驚きを誘うという構造は、和歌と共通するところが多々あります。現代のカルチャーとの共通点を見出してゆくというのも、私の最近の課題です。古典文学を単に「昔に書かれたもの」として、高尚で遠いものと捉えるのではなく、現代まで続く文化の一つの定点として捉えながら考察したいと考えています。

客観的な説得力をもつ文章を書く力を伸ばす。

ゼミでの発表は、自分が調べた内容を他の学生にも理解できるよう、また説得力を持って結論を示せるように、口頭だけではなく文章で調査内容と考察をまとめるように指導しています。国文学科では文学作品を読み、それについての研究を進めます。しばしば「感想文とどこが違うのか」と言われることもありますが、感想文と研究が違うのは、自分の考えを一方的に主張するのではなく、論理的にそれを示すことにあります。さまざまな可能性を検討し、根拠を提出した上で結論を示すことが必要なのです。特に卒業論文では、「他人にきちんと伝わる文章を書けているか。他人を納得させられるように書けているか」という点に注意することを指導しています。客観的な説得力を持つ文章を書ける力を培うことは、社会に出た後にも必ず必要となるものであり、さまざまな場で生かされると考えています。

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