PROFILE

文学部 国文学科
山中 延之先生
Yamanaka Nobuyuki

研究テーマ:日本語学

2015年京都大学大学院文学研究科文献文化学専攻修了、博士(文学/京都大学)。専門は日本語学。文化・語彙史料として「抄物」に着目し、日本語史を研究。桃源瑞仙の「史記抄」「百衲襖」、柏舟宗趙の「周易抄」、如月寿印の「中華若木詩抄」などの抄物をはじめ、室町時代の日本語、ことわざ、慣用句の変遷など。

 言葉にも歴史がある。その気づきが
コミュニケーションをもっと豊かに。 

言葉を通して私たちは歴史を知りますが、その言葉にも歴史があります。古事記や万葉集の書かれた時代はもちろん、現代日本語も戦後70年以上を経て、複雑に変化しています。ゼミでは、そんな日本語の変遷をたどりながら、言葉に潜む大いなる謎に挑戦。日本語の深い理解を通して文章読解力を養うとともに、言葉を生み出す社会や文化の関する教養の幅を広げます。そのためにはまず、先人たちの遺した精緻な研究にあたる必要があります。ただし、過去の論文も批判的に捉え、新しい発見につなげてほしい。情報を鵜呑みにせず、自ら思考する姿勢こそが、変化の激しい現代社会に求められているからです。

普段使いの日本語が研究対象に!

たとえば、国語学者永野賢(ながの・まさる)が1952年に発表した論文「『から』と『ので』とはどう違うか」によれば、どちらも原因や理由を表す接続助詞ですが、「『ので』は文末に用いない」とあります。つまり、「私は日本人ですから。」とは言うが、「私は日本人ですので。」とは言わない……しかし、本当でしょうか? 永野氏の論文にはその理由が詳細に論述されており、論破するのはかなり難しそうです。ただ、発表から60年以上経過したなかで日本語に変化が生じたためか、例外を見つけることができます。現在、「…ので。」で終わる文章や会話に出会うことは、特に珍しくないようにも思えます。みなさんも一度、自分が使っている言葉の中に探してみてください。こうして言葉に注意を向けてみると、普段使っている言葉のなかに多くの謎が潜んでいることに気づくことでしょう。

ゼミ研究の出発点は、常識を疑うこと?!

ゼミ研究は、主に「現代日本語」を研究対象とした論文を批判的に読むことからスタートします。学生はペアとなり、いくつかの論文集から1編の論文を選び出し、その内容の是非を検討します。さらに、著者の研究履歴や論文要旨、キーワード、研究史上における位置づけ、今後の研究の方向などを資料としてまとめ、ゼミ内で発表し、メンバー全員で異なる視点から検討を加えていきます。何より大切してほしいのは、論文に書かれていること、辞書の記述さえも鵜呑みにせず、一度きちんと疑ってみることです。他の視点から書かれた基本文献にあたり、その内容の是非を検討する。こうすることで、より確かな情報のありかを探し出す能力、1つの情報からより多くの情報を引き出す能力などが身につきます。それらは国文学研究のみならず、社会人としても必要な態度、技能です。

言葉がもつ豊かさ、面白さを次代に…。

国語学の研究は、言葉を生み出した歴史の学びであり、文化の学びでもあります。日本語の理解を深めながら文章読解力を養うとともに、歴史や文化に関する知識の幅を広げることができます。そのうえで国文学を学ぶみなさんには、人に何か日本語について質問されたとき、自分の言葉で的確に説明できるようになってほしい。そのためには知識や論理的な思考力、対話力も必要です。こうした力は、仲間との活発な議論を通して身につけることができるでしょう。ただ、言葉自体は時代によって変化し、立場や場面によって変わります。その一方で人々は、どこかに唯一の規範があるはずだと性急に答えを求めてきます。実は、そんなものはありません。言葉は生きもののように日々変化し、今日も新しく生まれている。だからこその面白さを、次代に伝えていける人を育てていこうと思います。

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