PROFILE

家政学部 生活造形学科
榎本 雅穗先生
Enomoto Masao

▶研究テーマ:人工皮革・合成皮革、透湿防水布帛について

1997年佐賀大学工学系研究科エネルギー物質科学専攻修了、博士(工学/佐賀大学)。セイコー化成株式会社 技術部勤務を経て、2006年名古屋女子大学短期大学部生活学科助教授に就任。同大学教授を経て2017年に家政学部生活造形学科教授に就任。専門は人工皮革・合成皮革に使用されるポリウレタン樹脂について。

 本革以上のクォリティとなる、
可能性を秘めた合成皮革。 

例えば、街を歩いていてふと店頭のバッグに目がとまった時、デザインや色はもちろんのこと、自分にとって負担が軽い値段かどうかも、購入の決め手となったりします。合成皮革は、一般に本革と比べて手ごろな価格で、ファッションのほかインテリア素材などとして、私たちの日常生活のなかで広く用いられています。ところで、人工皮革という言葉も耳にしますが、合成皮革と人工皮革は全くの別物なのでしょうか。また、「合成皮革は、安いけれどすぐボロボロになる」と聞くことがありますが、本当でしょうか。そもそも、本革そっくりの合成皮革って、どのようにつくられているのでしょうか。

用途に見合った品質を生み出せる合成皮革。

合成皮革や人工皮革は大半がポリウレタン樹脂からつくられます。表面はどちらもほぼ同じ形状です。人工皮革は合成皮革の中に含まれるもののひとつで、裏返したとき、裏基布に不織布を使っているものが人工皮革です。表面は本革と見分けがつかないくらいにしなやかな表面に仕上げることも可能です。合成皮革はすぐに表面がボロボロになるという人がいますが、それは違います。例えば自動車のシート用など、「10年の使用に耐えるような合成皮革をつくってほしい」という依頼があれば、それに応じた合成皮革を生み出すことができます。合成皮革は用途やコストに応じて製品設計し、生産されているのです。だから、980円のサンダルに用いられている合成皮革なら1年後には表面がボロボロとしてくるかもしれませんが、自動車のシートなら長く表面の形状を保っています。

産学連携で新商品開発を行うことも。

合成皮革自体の品質が劣るのではないと、わかっていただけたでしょうか。むしろ、染色加工をしたりストレッチ機能を持たせるなど、手を加えることによって本革以上の魅力をもつ素材となりうるものです。そのため、アパレル業界を中心に、かなりのニーズが見込まれる商材です。しかし、水に濡れると色移りしやすいといった難点もあります。そこで研究室では、マーケットのニーズに応える人工皮革の開発をめざしています。まずはポリウレタンの染色に着目しました。染料を用いると、透明感のあるきれいな色が生まれますが、色落ちしないようにするには、どのような条件が求められるのか。また、草木染めのような京都ならではの発想で染めてみたらどうなるのか。企業から商品開発の依頼も舞い込んでいるので、より実践的な研究となることでしょう。

実際に手を動かし、将来役立つ力を獲得。

ゼミでは、実際に自分で合成皮革をつくってみます。色も表面デザインも、自分次第。ドロドロに溶かしたポリウレタン樹脂の液体から合成皮革をつくるのは、他ではまずできない体験でしょう。染色の実験もします。色落ちテストや摩耗テストなど一連の評価試験も行います。こうした経験は、企業の研究職に就いた際に役立つのはもちろん、“賢い消費者”としての視点を養えると思います。また、実験その他の作業は必ずチームで行うことになるので、“協労性”やコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力など社会で求められるスキルが自然と身につくでしょう。私自身が長く企業に勤めた経験もふまえて指導していきます。

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