PROFILE

発達教育学部 教育学科 音楽教育学専攻
佐藤 岳晶先生
Sato Takeaki

研究テーマ:作曲・音楽理論・近世邦楽

桐朋学園大学ピアノ専攻卒業、パリ国立高等音楽院エクリチュール(作曲理論)科修了。地歌箏曲を人間国宝の二代 米川文子師に師事(芸名:佐藤文岳晶)。義太夫節を人間国宝の竹本駒之助師に、長唄・荻江節を今藤尚之(荻江露喬)師に学ぶ。西洋音楽と対照させた近世邦楽の研究において、東京藝術大学大学院音楽文化学専攻修了(博士(学術))。西欧と日本を横断する作曲・研究・演奏活動を行う。

音楽の多様性を認め合う先に、
新たな可能性が広がる。

クラシック、ポップス、ジャズ、ロック、邦楽…。現代の私たちを取りまく音楽は多彩です。前世紀の後半に興った「カルチュラル・スタディーズ」や「ポストコロニアリズム」に代表されるように、クラシック音楽のような「高級な」文化とポップスなような日常的に親しまれている文化、あるいは、西欧から生み出された文化とアジアやアフリカといった他の地域で育まれた文化といったものを、優劣ではなく、人間の営みの「多様性」として捉え、同じように真摯に研究していこうとする考え方が広まりました。こうした新しい世界の見方に創作を連動させ、新たな音楽の価値観を探していきたいと私は考えます。

新しい世界観に基づいた音楽創作。

かつて大学での作曲の学びとは、伝統的な西洋音楽の作曲法に基づくものでした。しかし私のゼミでは、多様なジャンルの音楽創作が取り組まれています。
これには、私自身が西洋音楽の作曲法のみならず近世邦楽の創作法の研究も行い、複数のジャンルにまたがった創作を日々実践していることも関係しています。新たな音楽創造のためには、一人ひとりが日々親しんでいる多様な音楽が自由に出会い、互いに刺激を与え合う場を創ることが重要です。ゼミは、私にとっても発見の場になっています。

より深い音楽作品の理解につながる。

ゼミ生一人ひとりの音楽的関心や創作したい音楽の様式は多岐にわたっており、各人が「このような音楽作品を創りたい」というものに自由に取り組みます。クラシック音楽の様式、ポップス風、ディズニー風、ハードロック風、和楽器を取り入れたもの…と、実に多様です。
作曲した作品は、実際に演奏し、発表へとつなげる。時には、プロフェッショナルな創作の現場にも触れてみる。「京都女子大学 ニューイヤーコンサート2019」では、和楽器・洋楽器混合による私の新作初演の舞台(写真右)を、ゼミ生は合唱団員として体験しました。創作の実践を、肌で感じてもらうことを大切にしています。
作曲を一度経験すると、試行錯誤を経て音楽作品として結実していくプロセスの一端が見えてきます。その経験からつかんだ視点は、既存の作品を演奏したり鑑賞する際にも、より深い作品理解の助けとなるはずです。
ゼミでは、学生一人ひとりの音楽的関心に沿って創作のサポートを行います。同時に、ゼミ共通の学修として、伝統的な西洋音楽の作曲法や和声法の学びを深め、西洋音楽を使いこなすスキルアップを図っています。

あらゆるものに多様な可能性を見出す。

ゼミの学びがその後の人生にどう活かされるかは、ゼミ生それぞれ。教育の現場に立つ場合は、音楽を通して子どもたちの創造性を育む授業展開に結びついていくでしょう。音楽活動に携わる場合には、作曲のスキルが創作や編曲に活かされていくと思います。
作曲には「正解」も「間違い」もありません。創作の途上、音の表現のいろいろな可能性が見えてきます。どれが最上なのかを選び抜き、一つの楽曲は完成します。しかし、その完成品が最上かどうかを断定するのも難しい。作曲とは、永遠に「答え」のない、しかし「答え」を求め続けての営みであり、そこに楽しさもあれば苦しさもあります。作曲の学びに、人として生きていく上での普遍的な学びがあるとするなら、それは、物事を単純に「正しい」「正しくない」、「善い」「悪い」と二分化せず、あらゆるものの中に長所もあれば短所もあり、その多様な可能性を汲み取ることのできる繊細な感受性と、柔らかな判断力の涵養でしょうか。このことは、私自身の課題でもあり、そのことを日々、ゼミ生とともに考え続けています。

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