PROFILE

家政学部 食物栄養学科
今井 佐恵子先生
Imai Saeko

研究テーマ:応用健康科学

博士(農学)(京都府立大学)。研究分野は応用健康学。病院における管理栄養士としての実務経験を生かし、管理栄養士の教育に携わりつつ、梶山内科クリニック院長梶山靜夫氏とともに糖尿病食事療法の指導及び研究を続け「食べる順番療法」を考案。高血糖を抑制する独自の糖尿病食事療法と合併症に関する研究、食事の摂取時間と摂取方法が血糖変動・ホルモン動態に及ぼす影響に関する研究等がテーマ。糖尿病関連の書籍から食事の食べ順に着目した書籍まで多数出版されている。

 健康も美容も食事のとり方次第で、
大きく変わっていきます。 

食べ物はカロリーや栄養素だけでなく、私たちが思っている以上に身体に影響を及ぼします。例えば糖尿病の患者さんの場合、野菜を最初に食べ、次におかず、最後にご飯を食べるという「食べる順番」の食事療法を取り入れることで血糖値に違いが出て病状が劇的に改善します。それは健康な人にとっても同様です。食べ物は健康維持はもちろん美容など、私たちのQOLに大きく関わっているのです。食と健康に関する研究について15年以上臨床研究を続けています。一つひとつ研究を重ねていくことで、一つのエビデンスに到達できるのです。食は文化の基盤でもあり、身近な食を通して人の役に立てることが喜びです。

劇的に病状が改善、着眼点は“食べる順番”

若いみなさんには、寿命の話はあまりに先のことのように思えるかもしれません。日本人の平均寿命と健康寿命の差を見ると、男性で9年、女性では12年あります。ということは悲しいことに人生の最後の約10年は、自立して生きられないということです。健康寿命を伸ばして平均寿命との差を縮めることは、人々の幸せにつながり、医療経済的にも非常に重要なのです。私たちは野菜を最初に炭水化物を最後に食べる順番によって糖尿病患者さんの血糖値が改善すること、インスリンの分泌が抑えられることを証明する論文を、2010年に世界で初めて発表しました。私達の論文は糖尿病診療ガイドラインにも食事療法のエビデンスの一つとしてあげられています。今では、健康のために野菜から食べることは、テレビ番組、雑誌、コマーシャルなどにも取り上げられ、広く浸透しています。2015年にはアメリカでも同様の食べ方で効果が再現され、世界でも注目を集めています。

臨床実験の積み重ねでエビデンスをとる。

食べる順番の食事療法を始めた患者さんたちは、1カ月、2カ月と時間を経るごとにどんどん血糖値が下がり、それがモチベーションになってさらに食事療法に励まれます。めんどうなカロリー計算や薬が必要ないのも、この療法が受け入れやすい要因です。血糖値が下がるだけでなく、野菜をたっぷり食べることにより、お肌も綺麗になり、美容効果もあります。持続血糖測定器という特殊な器械を使うと、5分毎の血糖値を自動的に計測することができ、血糖のピークや1日の血糖の変動幅を確認することができます。健康な人にとっても、食後の血糖値をできるだけ上げない食べ方の工夫をすることで、将来の糖尿病など生活習慣病を予防できる可能性があり、今後も研究テーマは広がっていくでしょう。研究には学生もボランティアで参加しています。自分が被験者になることで、研究プロトコールを検討するとともに患者さんの立場を体験し、将来、患者さんに親身にアドバイスできるようになることがねらいです。また京都女子大学では、大学内外の医師と連携し臨床研究を行っています。人の研究にはエビデンスが必要ですが、医学界では食事療法の有効性をなかなか証明することができていません。その臨床研究ができるのが京女の魅力の一つです。

自分の成長が社会に役立つと実感できる4年間に。

ゼミのテーマは糖尿病の食事療法だけではありません。最近、糖質制限という言葉がよく使われますが、適切な糖質制限食を探るということも一つのテーマです。また現在、妊娠糖尿病が増えており、400人以上のデータを学生が解析しています。さらに日本人の若い女性はやせている人の割合が高く、それは先進国でも日本だけの状況です。やせの女性が妊娠出産すると低体重児が生まれるなど次世代への影響が懸念されています。そこでやせ型の女子学生の食習慣や意識についての研究もしています。ゼミでは自分の研究に関連する英語の論文を読んで理解し、内容をまとめてプレゼンテーションします。そのため研究には英語が必要ですが、どの分野でも英語とプレゼンテーション能力は不可欠ですね。海外の論文を読むことで世界とつながり、世界に向けて発信できる研究への理解が深まります。特に4回生の1年間で学生は著しく成長します。科学的根拠を持った研究のやりがいとともに、社会や人々に役立つ研究であることを実感するからなのではないでしょうか。

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