PROFILE

発達教育学部 教育学科 音楽教育学専攻
田崎 直美先生
Tazaki Naomi

研究テーマ:フランスの音楽社会史

2001年お茶の水女子大学博士 (人文科学)。日本学術振興会特別研究員 (PD)、お茶の水女子大学 リーダーシップ養成教育研究センター講師 (研究機関研究員)等に就任。19世紀後半から20世紀前半のフランス音楽を研究テーマとする。

 音楽を通して歴史や文化、
その国らしさが見えてくる。 

音楽を会話のきっかけにすることがあります。「好きなミュージシャンは誰?」「最近、心に響いた曲は?」など。知っているミュージシャンや曲名が返ってくると、一気に相手への親近感が高まるものです。それが相手の好みや人柄がを知るのに役立つこともあります。また、気心の知れた仲間内で「あの頃にはよく、こんな音楽を聴いていたね」といった話題で盛り上がることもあります。音楽を通して、文化的背景や時代性が見えてくることがあるのです。では、日本でも人気の印象派の作品の数々が描かれていた19世紀後半のフランスでは、どんな音楽が流れていたのでしょうか。

フランスの歴史に音楽からアプローチ。

私の研究テーマは、19世紀後半から20世紀前半のフランスの音楽社会史です。その時代のフランスがどのような状況にあり、どのような音楽が人々の間で営まれていたのか、文化史的なアプローチをしています。
高校時代にクラシック音楽界で「フランス音楽」と呼ばれるものを聴いて共感を覚えたことが、研究の基点となっています。特に19世紀後半から20世紀前半のフランスではドビュッシーやラヴェルといった作曲家が活躍し、次いで「フランス六人組」と呼ばれる作曲家集団が登場しました。私は当初、フランス六人組のひとり、フランシス・プーランクという作曲家をテーマに選び、研究を始めました。

「今」を大切にするという伝統のスタイル。

個人的な興味から研究していくうちに、フランス音楽文化の複雑さに気づかされました。それは往々にして、政治的な要素や、人々の感覚的、文化的な要素を含め、社会のなかで意識的または無意識的に形成されたものである、と。そして自分は音楽そのものよりむしろそちらに興味があると気づき、現在の研究テーマに至っています。今は特に、文化交流という視点から研究領域を広げています。
現在の日本では一般に自国の文化を考えるとき、「伝統を重んじる」というか、「過去」の保存をベースにしています。これに対して20世紀前半のフランスでは、過去の遺産を大事にするのと同じように、「今」を生きる音楽家を大切にすることで新たな文化的発展を望む考え方が強いのです。それが現代のフランス音楽の伝統となっているように思います。

研究を通して自らの立ち位置を見つける。

ゼミでは特に歴史にこだわらず、研究テーマは各自に任せています。歴史に興味をもつゼミ生もいれば、出版ほか音楽ビジネスに関心を示す学生もいます。このためゼミでの発表内容はさまざまですが、自分の関心外のことにも興味をもち、互いに意見を出し合うようにしています。こうした研究と発表の繰り返しのなかで、視野を広げていくことができます。 歴史とはある意味、つくられた物語です。そうした批判的精神をもって研究に臨み、そのなかで、自分とはどのような人間であり、社会とどのように関わっていけるのかを見つけていくことが重要です。音楽を通じて社会での立ち位置を見つけられるよう、学生一人ひとりを応援します。

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