現代社会学部 現代社会学科
宮下 健輔先生



北海道出身。平成8年大阪大学大学院修了。博士(工学)。岡山理科大学工学部電子工学科助手を経て、平成12年より京都女子大学学内ネットワーク管理責任者。eラーニング推進センター長。

現代社会に欠かせない“情報工学”

インターネットは、私たちの生活に欠かせないもの。私は京女の学内ネットワークの管理責任者もしており、情報システム面から学生たちを支える役目を担っています。私が研究する情報工学とは、“情報”に注目した工学。情報の発生・伝達・蓄積・処理などさまざまな場面で利用できる技術の開発や改善を行う学問です。快適に利用できるネットワークの形状や構造はどんなものか、そしてそれはどのように実現できるかにとても興味を持ち、ネットワークを技術的、工学的な見地から研究しています。

以前の研究テーマ“並列アルゴリズム”

学生時代から10年間は、並列アルゴリズムを主題にしていました。アルゴリズムとは、問題を解くための手段のこと。決まった動作を手順通りに行うことで目的が達成される、料理のレシピのようなものですね。例えば、大量のテスト答案を学籍番号順に並べたいときに、最初から一枚一枚を番号順に並べ替えるより、まず10番代、20番代…というように小分けする方が合理的ですよね。さらに、この10番代、20番代それぞれのグループを並列に処理することで、複数人で協調し効率よくはたらくアルゴリズムを考えていました。

好きなことを研究するから面白い!

京女に着任してからは、ネットワークやサーバの管理運用を研究テーマにしています。この研究は、大学の情報システムに直結していることが大きな魅力です。さらに、使っている人に「勘付かれない」ように工夫を凝らす点も恰好いい。マウスカーソルを動かすアルゴリズムを考えるとき、その快適な動作ひとつに、どれほどのアイデアが詰まっているか考えたことはあるでしょうか?気付かれなくても、ものすごく工夫されているんです。 基本的に好きなことを研究しているので、面白いという気持ちが強く、苦労は感じていません。効率的にするすると動く仕組みを考えついたときには、思わず頬がゆるんでしまいますね。

どんどん進化する京女の情報システム

京女に数十台あるサーバとコンピューター教室の約600台のPC、学生が持ち込むPCなどを接続する学内のネットワークは、全校舎でつながっています。この管理運用には、私と現代社会学部の中山先生、情報システムセンター職員、常駐のSE数人であたっています。具体的には設計、予算の確保、構築、運用、改善という大きなサイクルのなかで、日常的にシステムの維持やユーザへの対応などの業務が発生します。 新しい取り組みとしては、これまで丸8年利用してきたサーバ群を2015年9月に更新しました。さらに2016年度にはネットワークを改良し、学生のみなさんがさらに快適で安全な情報システムを利用できるように努める予定です。

情報処理室で学んでほしいこと

2000年から構築・運用しているMac60台を設置した情報処理室は、現代社会学部の水野先生が構想を練り、私が現場に落とし込みました。Macを設置したのは、Windowsが普及して使用頻度が高まるなか、大学生の間に異なるOSに触れる機会をつくろうと考えたからです。なかでもMacを選択した理由はふたつ。ひとつは「パソコンはこうあるべき」という思想がWindowsと異なっていたこと、そして導入時期がちょうどMac OS 9からMac OS Xへの過渡期に重なり、新しいOSが今回の環境での利用に向いていたからです。 まずハードウェアがあり、その上でソフトウェアを動かすこと、ソフトウェアによってパソコンの使い勝手が決まることなどを、理解してほしいですね。

情報工学とアートのコラボに感動

私はずっと、研究室に放射線のカウンターを設置していました。これをパソコンにつないで回数を数値化すると面白いと思い、10年ほど前からデータを公開するサイトに掲載していたんです。すると、東京の美術館で作品を展示する作家さんから「放射線のデータをインスタレーションに利用したい」と連絡をもらいました。インスタレーションとは、場所や空間すべてを作品として、見る人に体感させる現代美術の手法のひとつ。私の計測したデータは、データの数値変化に伴って、展示作品を照らす光の強弱も変わるという照明に利用されました。京都で観測したデータが東京で活かされるのは、なんだか感慨深かったです。

京女生たちにも好きなことを学んでほしい

現代では、誰もが簡単に大量のデータにアクセスでき、それを利用する仕組みをつくることができます。これはインターネットの設計思想にもつながること。京女の学生たちにも、好きなことをとことん勉強して、羽ばたいていってほしいと思います。


取材日 2015年8月