○京都女子大学研究倫理規準

平成27年4月28日

制定

(前文)

大学における学術研究は、学問の自由の下に、良心に基づき自由に行われる活動を通し、真理を探究するという権利を享受すると同時に、社会からの信頼と負託に応えるという重大な責務を有している。

従って、学術研究に従事する研究者は、真理の解明や様々な課題の達成に向けて、社会が抱く期待に応え、社会に対して客観的で科学的な根拠に基づく公正な助言を行い、公共の福祉に資することが求められる。

そのため、研究者は、法令を遵守し、社会倫理を逸脱することなく、自律的で公正な研究活動を遂行し、研究成果を公表することで、各自の役割に応じた功績を認知されるとともに責任も負うこととなる。

京都女子大学は、その構成員が学術研究を行うにあたり、学問的良心に恥じることなく、適正かつ公正に研究が遂行され、持続的に社会からの信頼が得られるよう、あらゆる努力をはらい行動するとともに、不正行為抑止の教育啓発に継続的に取り組むことをここに表明する。

(目的)

第1条 京都女子大学(以下「本学」という。)は、学術研究の信頼性と公正性を確保することを目的とし、本学において研究に従事するすべての研究者及び研究に関わる事務職員が遵守すべき事項をここに定める。

(定義)

第2条 「研究者」とは、本学の教育職員のみならず、本学の教育職員と共同で研究活動を行う研究員等、本学で研究活動を行うすべての者をいう。学部学生、大学院学生等も「研究者」に準ずるものとする。

2 「研究活動」及び「研究」とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為であり、研究計画の立案、実施、成果報告・公表の過程におけるすべての行為と決定をいう。

3 「研究に関わる事務職員」とは、本学の研究に関する事務に携わるすべての専任職員、契約職員、アルバイター等をいう。

(研究者の基本的責任)

第3条 研究者は、自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し、さらに自らの専門知識、技術、経験を活かして、人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献するという責任を有する。

2 研究者は、国際的に認められた規範、規約、条約、国内の関連する法令及び告示等、並びに学校法人京都女子学園及び本学が定める関係規程等を遵守しなければならない。

(研究者の姿勢)

第4条 研究者は、常に正直、誠実に判断、行動し、自らの専門知識・能力・技芸の維持向上に努め、科学研究によって生み出される知の正確さや正当性を科学的に示す最善の努力をはらわなければならない。

2 研究者は、科学の自律性が社会からの信頼と負託の上に成り立つことを自覚し、科学・技術と社会・自然環境の関係を広い視野から理解し、適切に行動しなければならない。

3 研究者は、社会が抱く真理の解明や様々な課題の達成へ向けた期待に応える責務を有する。研究環境の整備や研究の実施に供される研究資金の使用にあたっては、そうした広く社会的な期待が存在することを常に自覚しなければならない。

4 研究者は、自らが携わる研究の意義と役割を広く公開・説明しその研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性・客観性をもって公表すると共に、社会との建設的な対話を築くように努めなければならない。

5 研究者は、自らの研究成果が、研究者自身の意図に反して、破壊的行為に悪用される可能性もあることを認識し、研究の実施、成果の公表にあたり、社会に許容される適切な手段と方法を選択しなければならない。

6 研究者は、研究・教育・学会活動において、人種、ジェンダー、地位、思想・信条、宗教などによって個人を差別せず、科学的方法に基づき公平に対応し、個人の自由と人格を尊重しなければならない。

7 研究者は、他の国、地域及び組織等の研究活動における、文化、習慣及び規律の理解に努めなければならない。

8 研究者は、研究に協力又は研究を支援する者に対して人格、人権を尊重し、福利に配慮する。動物などに対しては、真摯な態度でこれを扱わなければならない。

(他者との関係)

第5条 研究者は、他の研究者と共同研究を行うにあたり、共同研究者が対等なパートナーであることを理解し、お互いの学問的立場を尊重しなければならない。

2 複数の研究者等による共同研究の実施や論文作成の際は、個々の研究者間の役割分担・責任をお互いに明確化しなければならない。

3 研究者は研究活動のあらゆる局面において、良心と信念に従い、自らの責任で研究を遂行し、不当な圧力により研究成果の客観性を歪めることなく、一切の不正を行ってはならない。

4 研究者は、学生が共に研究活動に関わるときは、学生が不利益を被らないよう十分配慮しなければならない。

(資料、情報及びデータ等の収集)

第6条 研究者は、科学的かつ一般的に妥当な方法及び手段により、研究のための資料、情報及びデータ等を収集しなければならない。

2 研究者が、研究のために資料、情報及びデータを収集する場合は、その目的に適う必要な範囲において収集しなければならない。

(インフォームド・コンセント)

第7条 研究者が、人の行動、思想信条、財産状況、環境、心身等に関する個人の情報・データの提供を受けて研究を行う場合は、提供者に対して当該研究の目的・意義、収集方法等について、分かりやすく十分説明し、提供者の自由意志に基づく同意を得なければならない。

2 研究者は、提供者に予見し得る危険性、必然的に伴う不快な状態を説明すると共に、それらを可能な限り排除するよう努めなければならない。また、研究終了後の対応、苦情等の連絡先に関する情報も示さなければならない。

3 組織又は団体等から、当該組織又は団体等に関する資料、情報及びデータ等の提供を受ける場合も前2項に準ずるものとする。

(個人情報の保護)

第8条 研究者は、「京都女子学園の保有する個人情報の保護に関する規程」の趣旨にのっとり、研究に関わる個人情報を適正に取り扱わなければならない。

2 研究者は、研究のために収集した資料、情報及びデータ等で、個人を特定できるものを、本人の同意なしに他に洩らしてはならない。

3 研究者は個人情報の取り扱いに関する苦情等には、誠実に対応しなければならない。

(資料、情報及びデータ等の利用及び管理)

第9条 研究者は、研究のために収集又は生成した資料、情報及びデータ、実験ノート等の関連する研究記録を適切に保管し、データ等の滅失、漏えい及び改ざん(データの変造、偽造)等を防ぐために適切な措置を講じなければならない。

2 研究者は、研究のために収集又は生成した資料、情報及びデータ、実験ノート等の研究記録を、事後の検証が行えるよう適切な期間保管しなければならない。

3 保管についての具体的な内容やその期間、方法、開示については、研究データの性質や研究分野の特性等を踏まえて規定し、関連する法令、又は本学の関係規程等に保存期間の定めがある場合は、それらに従うものとする。

(研究成果の発表)

第10条 研究者は、研究活動によって得られた成果を広く社会に還元するため、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けなければならない。ただし、関係者の権利保護や産業財産権の取得等合理的な理由があるため公表に制約がある場合は、その合理的期間内において、公表しないものとすることができる。

2 研究者は、他者の成果を自己の成果として発表してはならない。

3 研究者は、研究成果の発表にあたっては、先行研究を精査し尊重するとともに、他者の知的財産を侵害してはならない。

4 研究成果の発表にあたっては、私的利益への配慮や不当な圧力により研究成果の客観性を歪めることがあってはならない。

5 研究者は、研究の遂行及び成果の発表において、捏造(存在しないデータの作成)、改ざん(データの変造、偽造)、盗用(他者のアイディア、データや研究成果を適正な引用なしで使用)等の不正な行為をしてはならない。

(オーサーシップ)

第11条 研究者は、研究活動に実質的に関与し、研究内容に責任を有し、研究成果の創意性に十分な貢献をしたと認められ、研究のあらゆる側面について説明できる場合に、適切なオーサーシップを認められる。

(二重投稿)

第12条 著者自身によって既に公表されていることを開示することなく、同一の情報を投稿、発表する二重投稿は、論文及び学術誌の原著性を損ない、研究実績の不当な水増しにもつながり得る研究者倫理に反する行為であり、認められない。

(他の研究者の業績評価)

第13条 研究者が、論文査読、審査委員等の委嘱を受けて他者の業績評価に関わるときは、評価に恣意的な観点を混入することなく、評価基準及び審査要綱等に従って適切な評価を行わなければならない。

2 研究者は、他者の業績評価に関わり知り得た情報を他に洩らしたり、不正に利用してはならない。

(ハラスメント)

第14条 研究者は、「京都女子学園におけるハラスメントの防止等に関する規則」を遵守し、研究に関わるすべての人が、対等な個人として尊重され、ハラスメントのない状態を確保しなければならない。

(研究機器・薬品・材料の安全と有害廃棄物処理)

第15条 研究者は、研究実験において研究装置・機器及び薬品・材料を用いるときには、関係法令、本学諸規程等を遵守し、その安全管理に努めなければならない。

2 研究者は、研究実施上発生する有害廃棄物について、本学の関係諸規程を遵守し、適切に処理しなければならない。

(研究費の適正な執行)

第16条 研究者は、研究費の資金源泉が学生納付金、国・地方公共団体等からの補助金、財団からの助成金、企業等からの寄付金等によって賄われていることを常に認識し、研究費の適正な執行に努めなければならない。

2 研究者は、交付された研究費を当該研究目的のみに使用しなければならない。

3 研究者及び研究に関わる事務職員は、あらゆる研究費の使用及び管理に当たり、法令・本学の経理規程・「京都女子大学公的研究費取扱規則」等の当該研究費に関わる諸規程を遵守しなければならない。

4 研究者及び研究に関わる事務職員は、証憑書類等を適切に管理し、実績報告においては、研究遂行の真実を明瞭に記載しなければならない。

(利益相反)

第17条 研究者は、自らの研究行動にあたり、利益相反が発生しないように、本学の関係諸規程を遵守し、本学と本学の教職員及び学生の社会的信用及び名誉を保持しなければならない。

(京都女子大学の責務)

第18条 本学は、本規準を学内に周知徹底し、研究倫理に係る意識を高め、研究者に求められる倫理規範を修得させるための教育(以下「研究倫理教育」という。)の計画を策定し、実施することにより研究活動における不正防止を図るものとする。

2 本学は、この規準の運用を実効あるものにするため、研究者の研究倫理に反する行為に対しては、別に定める規程により適切な措置を講ずるものとする。

3 本学は、この規準の目的達成と、適切な運用を図り、研究倫理教育を推進するため、京都女子大学研究倫理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

4 委員会に関する事項は、別に定める。

(改廃)

第19条 この規準の改廃は、委員会に諮り、評議会の議を経て学長が行う。

この規準は、平成27年4月28日から施行する。

京都女子大学研究倫理規準

平成27年4月28日 種別なし

(平成27年4月28日施行)