PROFILE

発達教育学部 教育学科 音楽教育学専攻
坂本光太先生
Kouta Sakamoto

研究テーマ:管楽器実技、身体の使い方、現代音楽、実験音楽

博士(音楽)。チューバ奏者、即興演奏者、パフォーマー。中学吹奏楽部に入部して初めて楽譜を読む。そこで吹奏楽にすっかり惹き込まれ音楽の道を志す。現在は現代音楽、実験音楽を中心に演奏活動を行っている。東京藝術大学卒業、同大学院およびドイツ国立ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン大学院にて修士課程を修了。ヴィンコ・グロボカール作品における社会批判の研究で国立音楽大学大学院博士後期課程を修了。共著に『音楽で生きる方法:高校生からの音大受験、留学、仕事と将来』(青弓社、2020)

管楽器の演奏レパートリーを広げ、
プログラムの組み立て方を学ぶ。

ゼミでは、個人レッスンを基本として管楽器実技に取り組みます。レッスンを毎週実施しており、そのレッスンで取り上げる楽曲は学生自身が自主的に選択。レッスンでは一週間の練習に対するフィードバックを得て、次の一週間はそれを元に再び練習を重ねます。2022年度のゼミ生は、高校までに吹奏楽やオーケストラで管楽器を演奏していた人がほとんどで、トランペット、ホルン、サックス、クラリネット、フルートを学んでいます。3・4回生の前期・後期という4つのセメスターを通して、バロック、古典派、ロマン派、近現代という西洋音楽の4つの時代の音楽に触れ、卒業時には45分程度のハーフ・リサイタルを開催できるようなレパートリーと、演奏会プログラムの組み立て方を身につけます。

発表する機会を豊富に設け、演奏会も実施。

学生の主体的な学びを促すために、さまざまな場所で発表する機会を多く設けています。3回生後期学内演奏会、年に一回の管楽器ゼミ学外発表会、また、場合によって依頼を受けてその他のコンサートやアウトリーチプログラムなどで、ソロやアンサンブルの楽曲を発表しています。その中でも、最も力を入れているのは管楽器ゼミ学外演奏会です。第一回のコンサートでは外部のサロン・ホールを借りて、一人あたり30分のソロ演奏を行いましたが、選曲は学生に一任しました。クラシカルなレパートリーで構成したプログラム、短い歌曲のメドレーと協奏曲を組み合わせたプログラム、また作曲ゼミの学生に楽曲を提供してもらって作ったプログラムなど、それぞれの学生が思い思いの30分を構成して、バラエティーに富んだ演奏会になりました。

研究テーマは、現代音楽と演奏における身体の使い方。

私自身の研究テーマは、現代音楽と演奏における身体の使い方です。前者の領域では、同時代を生きる作曲家の新曲の共同制作・初演といった演奏実践や、戦後の前衛音楽・実験音楽の作曲家の作品研究を行っています。後者の領域では、それぞれの奏者に合った、より効率的な身体の使い方について研究しています。特に関心を持って研究しているのは、作曲家兼トロンボーン奏者、そして即興演奏家でもあるヴィンコ・グロボカールという人物です。両大戦間にスロヴェニア系移民労働者階級の子どもとしてフランスに生を受け、青年期を社会主義国家で過ごし、音楽家としてさまざまな国を巡り回った来歴を持つグロボカールは、国家や経済の都合に蹂躙される人々の営みに、自然と注目することになります。公権力による人権の抑圧、移民の疎外や戦争といった社会問題を取り扱った彼の作品が、戦争と難民の問題が顕在化する現在において、どのような意味を持ちうるかということに関心をもって、演奏実践・作品研究の両方からアプローチしています。

自分の「こだわり」を見つけてほしい。

自分でこれと決めた一曲について、楽譜に書かれたさまざまな情報、その時代背景や成立過程、作曲技術の特徴などを精査しながら徹底的に深めていくと、自然と「こう吹きたい」という気持ちが湧いてきます。その「こだわり」を、自分の息と、身体とを通じ、音で体現していくことの喜び、演奏の奥深さを、学生に知ってほしいと思っています。また、共演者と互いの「こだわり」をすり合わせながら、時に落とし所を探し、また時に思いがけない解決法を発見するアンサンブルの中には、小さな民主主義が存在します。仲間と一つのものを作り上げる中で、協調と自己主張を調和させることは(そしてきっと逸脱することすら)、大学の外のさまざまな状況に応用することができるでしょう。

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